「シネマ最前線」は日経エンタテインメント!誌がお届けする映画界のトレンド&マーケティング情報です。今週の映画興行成績と、週末公開される話題作について、隔週金曜日に掲載します。

 2月24日(日本時間25日)にロサンゼルスで催されるアカデミー賞。アカデミー会員約6000人が投票で選び、今年は節目となる80回を迎える。

 作品賞にノミネートされたのは5本。10代の妊娠を描いたコメディー『JUNO/ジュノ』、大金を持ち逃げした男を殺し屋と保安官が追う『ノーカントリー』、石油採掘者の成功と転落を描く大河ドラマ『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、少女の犯した小さな罪が男女の運命を狂わせる『つぐない』、法律事務所の裏の仕事を請け負う男を主人公にした『フィクサー』。

 発表を2週間後に控え、メディアでは『ノーカントリー』の評判が高い。批評家や映画関係者が選ぶ映画賞で、作品賞や監督賞など100部門近くで受賞。アカデミー賞では作品賞のほか最多8部門でノミネートされている(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と同数)。過去20年間で16回は最多ノミネート作品が作品賞を受賞している。

 だが、興行収入(興収)から予測すると、最有力作品は違ってくる。

『JUNO/ジュノ』
予定外の妊娠をしてしまった女子高生は、赤ちゃんに完ぺきな両親を見つけようと奔走する。(20世紀フォックス/初夏公開)(画像クリックで拡大)

『フィクサー』
法律事務所の裏の仕事を請け負うフィクサーが、巨大企業をめぐる陰謀に巻き込まれる。(ムービーアイ/4月12日公開)(画像クリックで拡大)

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
二十世紀初頭のカリフォルニアを舞台に、石油採掘で巨万の富を得た男の栄光と挫折を描く。(ディズニースタジオ/4月公開)(画像クリックで拡大)

『ノーカントリー』
偶然見つけた大金を持ち逃げした男と彼を追う殺し屋。地元の保安官も2人を追う。(パラマウント、ショウゲート/3月15日公開)(画像クリックで拡大)

アカデミー会員の思惑

 2001年以降、アカデミー作品賞を受賞した映画の興収を見ると、「ノミネート後から発表までに興収を1000万ドル以上伸ばしている」(3本を除く)、「総興収が1億ドルを超えている」(1本を除く)ことがわかる。作品賞は、ノミネート作5本のなかで観客を集めているものが受賞する傾向が強い。

 アカデミー賞は会員が選ぶとはいえ、映画界を支えるのは一般の観客だ。観客があまり注目しない映画を作品賞に選ぶと、「観客不在のアカデミー賞」といわれかねない――そんな思惑が会員の間に働くようだ。

 「興収を1000万ドル以上伸ばす」「総興収が1億ドルを超える」の2つの条件を満たすのは、実は『ジュノ』だけ。メディアで評判が高い『ノーカントリー』は2月3日までの興収の伸びが620万ドル、総興収は5510ドルとかなり低い数字だ。数字から本紙は『ジュノ』の受賞を予測するが、当たるか注目してほしい。

 作品賞以外の主要部門を予測すると、主演男優賞はダニエル・デイ・ルイス『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、主演女優賞はジュリー・クリスティ『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』、監督賞はジョエル&イーサン・コーエン監督『ノーカントリー』が最有力だ。それぞれ俳優組合賞、監督組合賞を受賞。組合に所属する俳優・監督の多くはアカデミー会員であり、受賞する可能性は高い。

(文/日経エンタテインメント!編集部)

 作品賞受賞作は1本を除き総興収が1億ドルを超える
 今年の候補作5本で1億ドル超えは「ジュノ」だけ

2月3日時点

監督賞は誰が受賞しても初めて
名前 タイトル
ジュリアン・シュナーベル 『潜水服は蝶の夢を見る』
トニー・ギルロイ 『フィクサー』
ジェイソン・ライトマン 『JUNO/ジュノ』
ジョエル&イーサン・コーエン 『ノーカントリー』
ポール・トーマス・アンダーソン 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

ジョエル・コーエンは『ファーゴ』で監督賞にノミネートされたが、イサーンは初めて。ほかの4人も初ノミネート。ギルロイ、コーエン、アンダーソンはオリジナル脚本賞でもノミネートされている

主演女優賞は66歳と21歳の争い
名前 タイトル
ケイト・ブランシェット 『エリザベス/ゴールデン・エイジ』
ジュリー・クリスティ 『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』
マリオン・コティヤール 『エディット・ピアフ/愛の讃歌』
ローラ・リニー 『The Savages』
エレン・ペイジ 『JUNO/ジュノ』

66歳のジュリー・クリスティは10年ぶり4度目のノミネート。受賞すれば1966年『ダーリング』以来、42年ぶりとなる。5人の中で最年少はエレン・ペイジ(初ノミネート)。授賞式3日間の2月21日で21歳となる

主演男優賞でジョニー・デップの番狂わせはあるか
名前 タイトル
ジョージ・クルーニー 『フィクサー』
ダニエル・デイ・ルイス 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
ジョニー・デップ 『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』
トミー・リー・ジョーンズ 『告発のとき』
ヴィゴ・モーテンセン 『イースタン・プロミセズ』

ダニエル・デイ・ルイスは4度目、ジョニー・デップは3度目のノミネートとなる(ルイスは1度受賞)。ルイスが本命視されているが、デップの番狂わせはあるか

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