今年3月27日、英国のロンドン・ヒースロー空港に新しい5番目のターミナルがオープンする。通称T5と呼ばれる「ターミナル5」は、イギリスを代表する航空会社「ブリティッシュ・エアウェイズ(以下BA)」の専用ターミナルとして機能し、単に空港の拡張というよりは、乗客に対して“快適”な新サービスを提供する新しいヒースロー空港であり、新しい英国の顔になる。T5のオープンに先駆けて、一足お先にその新しさを紹介していこう。

広々とした空間作り

 現在のヒースロー空港は4つのターミナルを抱え、ヨーロッパでは最大の利用旅客数を誇る。その一方で、ヨーロッパで最もストレスの多い空港、ともいわれる。その理由は、元々が戦前の1930年に開港したという古い空港であることに加え、増築と改装を交互に繰り返したためだ。昨今の新築空港に比べると空港内の施設環境、アクセスが格段に悪い。それでも、ロンドンは文化、政治、金融の中心地であり、利用客は常に増加し続ける。そこでまた増改築を…、という“いたちごっこ”のような状況が続いている。常に人が集まらざるを得ない都市のメーン空港であるがゆえの宿命であろう。

 さらにロンドンは2012年にオリンピックを控え、今後ますます人の出入りは激しくなることが予想される。時期は未定だが、BAは総2階建てでこれまでで最も多い乗客を乗せられる新しい「エアバスA380」の導入を予定している。航空会社のサービス競争が激化するなか、T5は「より迅速、より円滑、より簡単に」を実現するという。

 まず圧倒されるのは、T5の建物自体の規模だ。高さ40メートル、奥行き396メートル、幅176メートルの5階建て。単独でも英国最大容積の建築物となる。ゆったりとした丘のような屋根のラインと、全面を覆うガラスパネルが印象的だ。

T5外観予想図(画像クリックで拡大)

 建築を手がけたのは英国が誇る建築会社、リチャード・ロジャース率いるリチャード・ロジャース・パートナーシップ社(現在は社名変更し、ロジャース・スターク・ハーバー+パートナーズ社)。ダクトや柱などの構造や素材が分かるというのがロジャース建築の特徴の一つ。T5もまた、柱の大きなジョイントがダイナミックに存在感を見せている。また、意外なくらい柱が少ないのも興味を引く。柱を少なくする建築構造を採用し、建物の内部に広い空間ができあがっている。高い天井、全面のガラスパネル、視覚を妨げる柱の不在、とこれだけでも相当に快適な空間だ。