ついに2000万画素の壁を突破! それだけにシビアな撮影が要求される

 有効画素数は、前機種の1670万画素から2110万画素に増え、画像サイズは最大で5616×3744ドットとなった。画質は、もはや35mm判フィルムを凌駕するどころか、大判にも迫る勢いだ。さすがにこのサイズになると、ピクセル等倍ではちょっとしたブレやボケも目立つ。実際、そこまでの拡大率で鑑賞することはないだろうが、三脚を使うなどの手間は惜しまない方がよいだろう。

 また、解像度もさることながら、センサーからのアナログ信号をデジタルに変換するA/D変換処理が12ビット(4096階調)から14ビット(1万6384階調)と4倍になった。これにより、階調表現はさらに豊かになり、トーンジャンプの発生も少なくなった。実際のところ、画質で欠点を探すのは困難なほどだ。

 最高感度はISO1600(拡張時はISO3200)までと、1D MarkIIIに比べると1段低く抑えられているが、ISO1600でもさほどノイズは目立たない。ISO3200でも、シャドウにノイズが若干浮くものの、決して目障りではなく、十分実用に耐えうると思う。

 一方で、カメラの解像度にレンズの解像度が追いつかなくなりつつあるようにも感じた。2110万画素の解像度に耐えうるレンズ選びが求められるのは確かだろう。今回は、おもに「EF24-105mm F4L IS USM」を使ったが、もっとも性能を発揮しやすいはずのF8~11に絞っても、周辺画質はやや不満が残った。そのこと自体は、同じフルサイズフォーマットの前モデルや「EOS 5D」でも同じなのだが、解像度が高いだけに現象が顕著になってしまう。

 ただし、超広角レンズでの強烈なパースペクティブや、単焦点レンズでの豊かなボケ味が楽しめるのは、フルサイズならではの特権だ。今回、1Ds MarkIIIと同時に発表された「EF14mm F2.8L II USM」も試すことができたが、歪みはほとんど見られず、きわめてシャープな像を結んだ。また「EF24mm F1.4L USM」や「EF50mm F1.4 USM」などの単焦点レンズも装着してみたが、その持ち味をあますところなく発揮してくれた。

 AFに関しては、測距点の数こそ45点と前モデルから変わらないが、F2.8対応のクロスセンサーが7点から19点に増加した。他の26点は、F5.6対応のアシスト測距点となっている。

 合焦スピードの速さはEOS DIGITALならではだが、ファインダーをのぞいていると、視野が広いため一層気持ちよく感じる。また、1D MarkIIIと同じく背面にAF-ONボタンが新設され、AF操作もより細かくカスタマイズできるようになった。

 画質だけでなく、レスポンスなどのパフォーマンスも大幅に向上している。画像処理エンジンはDIGIC II×1基からDIGIC III×2基となり、処理能力は約4倍にアップ。バッファーメモリーも約2倍に増強している。これにより、連写速度は最高秒4コマから5コマになった。連続撮影枚数も、JPEG形式のLargeで約56枚、RAW形式で約12枚(前モデルではそれぞれ32枚と11枚)となっている。

 ただ、難しい注文かもしれないが、このカメラの性質や用途を考えると、RAWでの撮影能力をもっとアップしてほしかった。バッファーメモリーがフルに達すると、メディアへの書き込み状態がしばらく続き、本来の連写速度に戻るにはかなりの時間を要するのだ。機動力よりも画質を最優先した機種とはいえ、ある程度のレスポンスはほしい気がした。

 ちなみに、コンパクトフラッシュとSDメモリーカードのダブルスロットは前モデルから変わらないが、片方のカードが満杯になると書き込み先が片方のカードに変わる「自動切り換え」と、2枚のカードに異なる画像サイズ・形式のデータを記録できる「振り分け」が新たに可能となった。なお、高速転送が可能なUDMA(Ultra DMA)方式のメモリーカードに対応しているのは、1D MarkIIIと異なる点だ。

 バッテリーがニッケル水素からリチウムイオンに変更されたのも大きな変更点だ。カタログによると、常温では約1800枚撮影できるとある。残量を1%単位で知ることができるほか、劣化の度合いも3段階で表示される。実際に残量が0%になるまで試したわけではないが、1000枚近く撮影しても残量は70%前後といった具合だった。

 バッテリー込みの重量は、前モデルの1550gから1390gと1割近い軽量化を果たしているが、実は本体そのものは約5gしか軽くなっていない。バッテリーの変更が軽量化に大きく貢献しているのだ。

 キヤノンでは、EOS-1Ds系と1D系をともにEOS DIGITALシリーズの“フラッグシップ”としている。秒10コマと連写性能に優れる1D系は報道・スポーツの写真家に、1Ds系はスタジオや風景をフィールドにする写真家に向けたものという位置付けのようだ。しかし筆者としては、価格といい画質といい、EOS-1Ds MarkIIIこそフラッグシップの称号を与えるにふさわしいと思う。おいそれと買えるカメラではないが、もし手にする機会があれば、ほとんどの人が「これぞ最高級機!」と納得できるはずだ。

EF50mm F1.4 USMを絞り開放で使ってみた。個人的には、単焦点レンズと組み合わせて積極的にボケ味を楽しみたいカメラだと感じる(ISO100、1/60秒、F1.4)

通常設定できる感度の限界であるISO1600で撮影。A4判程度のプリントであれば、ノイズはほとんど気にならないレベルといえる(ISO1600、1/15秒、F4)

こちらは、拡張感度であるISO3200での撮影。ノイズはそれなりに浮いているものの、ハイライトからシャドウまできちんと再現しているのには驚いた(ISO3200、1/30秒、F4)

高輝度側・階調優先をオンにして撮影。シャドウをつぶさずに描写しつつ、夕焼け空の淡いトーンをうまく再現している(ISO200、1/160秒、F9)

■「EOS-1Ds MarkIII」のココが○、ココが×!
ポイント 評価 コメント
画質 有効約2110万画素で、しかも高感度はISO1600が十分実用可能とあれば、もはや文句の付けようがない。EOS-1D MarkIIIや40Dにもいえることだが、DIGIC IIIと14ビットA/D変換により、とても立体感のある描写になった。フィルムの持つ深みが、少しずつデジタルでも感じられるようになったといえる。
デザイン 曲面を巧みに処理したデザインは、手に程よくフィットする。個人的にはとても好きなのだが、金ピカのエンブレムはいただけない。1D系と明確に区別できるように…との配慮なのだろうが、必要以上に存在感を放っている。区別するためなら、他にも方法はあるはず。
操作性 液晶モニターの大型化でボタンの配置がだいぶ変わったが、使いにくくなったということはない。むしろ、前モデルまでの独特な操作体系が一新され、EOS DIGITALシリーズで共通化が図られた。旧ユーザーの間では賛否両論あるようだが、人間工学的に考えれば遅きに逸した感すらある。
コスト
パフォーマンス
その人の価値観で◎とも×とも評価できる。というより、◎か×しかないと思う。筆者は、呆れられるのを覚悟であえて◎をつけた。性能を考えれば、90万円近い実売価格は決して法外ではないと思う。むしろ安い買い物だ。買えるわけはないけれど…。

(鹿野貴司)

製品名 EOS-1Ds MarkIII
発売 キヤノン(http://canon.jp/
希望小売価格 オープン
実売価格 90万円
撮像素子 35mmフルサイズ2190万画素C-MOSセンサー
有効画素数 2110万画素
手ぶれ補正機能 なし
撮像素子ごみ除去機能く 搭載
レンズ オプション
撮影範囲 使用するレンズに依存
シーン撮影モード なし
最高記録解像度 5616×3744ドット
ISO感度 ISO100~1600相当(1/3、1段ステップ)、ISO50およびISO3200への感度拡張も可能
動画撮影機能 なし
記録媒体 コンパクトフラッシュ/マイクロドライブ、SDメモリーカード/SDHCメモリーカード
液晶モニター 3型TFT(23万画素)
ファインダー 光学ファインダー(視野率100%、倍率約0.76倍)
電源 専用リチウムイオン充電池
撮影可能枚数 約1800枚(ライブビュー撮影なし)
PCとの接続 USB2.0
PictBridge 対応
外形寸法、重量 156(W)×159.6(H)×79.9(D)mm、1210g(本体のみ)
ボディカラー ブラック
発売日 2007年11月29日