2007年はテレビにとって多難の年だった

 HUT(総世帯視聴率)の低下、HDDレコーダーによる録画視聴の増加、YouTubeやニコニコ動画といったテレビのライバルたちの台頭--要は“テレビ離れ”である。とりわけ深刻なのが連ドラの不振。例えば今年の10月クールでは、『ガリレオ』(フジテレビ系)『医龍 Team Medical Dragon2』(フジテレビ系)『SP』(フジテレビ系)を除いて、軒並み一ケタの視聴率を連発。TBSに至っては4作品中3作品が平均視聴率一ケタに終わった。各局とも表向きは他局との視聴率合戦に明け暮れるが、彼らが本当に恐れているのは、テレビというメディア自体が飽きられること。今、テレビの視聴率を支えているのは、小中高生と主婦、それに50代以上の熟年層で、中間の20代や30代が急速にテレビから離れ始めている。視聴者の二極化である。

連ドラ1位は「華麗なる一族」

 そんな中、今年最も視聴率を稼いだ連ドラは、1月クールに放映されたTBS系の『華麗なる一族』である。山崎豊子の原作をドラマ化したもので、平均視聴率23.9%は連ドラ不振の中では大健闘。それはひとえに、今のテレビの主要視聴者層である主婦と熟年層が見たからである。

 もちろん内容も良かった。演出は『金八先生』や『さとうきび畑の唄』など骨太の演出で知られる福澤克雄、脚本は『WATER BOYS』の橋本裕志、主演は言わずもがなの木村拓哉。もっとも、木村拓哉演ずる万俵鉄平が原作と違って主演だったのは、少々残念だった。個人的には、かつて映画で鉄平役を演じた仲代達矢あたりを主人公の万俵大介にして、キムタクは二番手でも良かったのではないかと思う。過去の『あすなろ白書』もそうだが、彼は二番手でも十分引き立つ役者である。

 それ以外で目に付いたドラマといえば、篠原涼子の『ハケンの品格』(日本テレビ系)だろう。平均視聴率20.1%。特筆すべきは最終回の26.0%で、このドラマの終盤の盛り上がりを表している。派遣社員という旬なネタを料理できるのはテレビドラマの強みであり、漫画原作が多い昨今、オリジナルで挑んだ脚本家の中園ミホを評価したい。そして何より篠原涼子の存在が大きい。コメディー演技なのに過剰になりすぎず、どこか人間味を感じさせるのは、彼女のナチュラルな魅力の賜物(たまもの)だろう。

実験作で成功したフジ土曜23時枠

 苦戦するドラマ界にあって、一筋の光明もある。今年4月にフジテレビが新設した土曜23時のドラマ枠がそう。4月クールが『ライアーゲーム』、7月クールが『ライフ』、そして10月クールが『SP』で、どれも二ケタ視聴率。中でも『SP』は『踊る大捜査線』の本広監督に、脚本が直木賞作家の金城一紀、そして主演が岡田准一に堤真一と、月9ドラマにしてもいいくらいの豪華布陣である。なぜフジは23時枠にこれをぶつけたのか? 20代・30代をテレビに呼び戻すには、彼らの在宅率が高い23時台のほうが効果的だからである。その作戦は今のところ成功しており、『SP』は第2話で17.6%の高視聴率を叩き出した。

 2007年のドラマでもうひとつ挙げるなら、大河ドラマの『風林火山』も評価したい。平均視聴率18.7%は昨年の『功名が辻』より下げたが、その骨太な作風は久々の王道大河。視聴者の反応はこの数年来で随一だったと思う。脚本は『クライマーズハイ』の大森寿美男。山本勘助役の内野聖陽、武田信玄役の市川亀治郎とも視聴者の反応は上々だった(個人的にはGackt演ずる上杉謙信はやりすぎの感もあったが…)。もう、こんな骨太な大河はしばらく見られないだろう。

バラエティは「はねる」と「ヘキサゴン」がブレイク

 バラエティー番組に目を転じると、視聴者の二極化を反映して、小中高生向けに作られた番組が成功した。中でも目立ったのがフジテレビの水曜ゴールデンコンビの『はねるのトびら』と『クイズ!ヘキサゴンII』の大躍進。どちらも、かつて深夜番組として人気を博し、ゴールデンに上場した番組だが、当初は視聴率が伸び悩んだ。そこで番組をリニューアルし、『はねる~』はコント番組から「ほぼ100円ショップ」や「回転SUSHI」などのゲームバラエティーに転じて2007年は平均視聴率が17.3%と、昨年の20位から2位へと大躍進。『ヘキサゴンII』も、かつての『ヘキサゴン』の心理ゲームから現在の珍回答バラエティー番組へと転じ、里田まいやスザンヌら“おバカ”タレントたちを輩出して2007年は平均視聴率が15.3%と、昨年の31位からベストテンへ大躍進した。

深夜はテレ朝黄金時代! 強い「タモリ倶楽部」

 一方、深夜は今年もテレビ朝日が一人勝ちだった。深夜の平均視聴率トップ15のうち、実に13番組がテレビ朝日。中でも今年26年目の『タモリ倶楽部』の安定感は特筆に値する。7.5%は深夜帯2位。いい意味でのマニアックさが受けている。お馴染みの「鉄道」ネタや「昭和」ネタも、視聴者に迎合するのではなく、あくまでタモリをはじめとする出演者たちが心の底から楽しんでいるのがいい。予定調和が蔓延(まんえん)するバラエティー界にあって、ある種のリアリティーが視聴者を惹きつけている。

 2008年のテレビ界は、今年よりさらに厳しいものになるだろう。それを打開するには、テレビでしかやれないことを、どれだけ見せられるかに尽きる。

(文/草場滋)

著 者

草場滋(くさば しげる)

「2019年のビッグマック」(指南役・著/高田真弓・画;ダイヤモンド社)
定価1365円


エンタテインメント企画集団「指南役」代表。日経エンタテインメント!誌で「テレビ証券」を連載中。12月に初の近未来ライトノベル「2019年のビッグマック」(ダイヤモンド社;写真)を刊行。55点の近未来イラスト、2019年までの近未来年表がついた豪華ビジュアルブックである。