今年の秋は、カメラメーカー各社からミッドレンジの高性能デジタル一眼レフが続々と登場し、販売店の店頭を賑わせているのはご存じの通り。各製品とも、画質やデザイン面で大きく進化しただけでなく、独自の機能や魅力を備えており、メーカーの技術者の努力がうかがい知れる。

 それらの特徴のほとんどはカタログなどでチェックできるが、あえて公にしていない苦労話や改良のポイントも多く存在するはずだ。そこで、新旧のカメラ事情に詳しい桃井一至カメラマンが、ソニーのミッドレンジデジタル一眼「α700」(α700のレビュー記事はこちら)の開発者を直撃し、開発の苦労話やアピールポイントを伺ってきた。桃井カメラマンの鋭い攻めにより、思わず本音が漏れてしまうかも!?

桃井:α700も発売からひと月ほど経過して、購入したお客さんもある程度使い込んでもらっているころだと思います。α700とほぼ時期を同じくして、各メーカーから強力なライバルも出てきましたが、発売を迎えての感触などをお聞かせいただけますか。

α700の商品企画を担当した、ソニー デジタルイメージング事業本部 AMC事業部の竹倉千保氏。「長らく待っていただいたαユーザーの期待に応えられるカメラに仕上がりました」

竹倉氏:α700は、どちらかというとスペック的にまとまっていることもあり、「実際に使ってみると仕上がりのよさが実感できる」という声を多くいただきました。α100と比べて、手ぶれ補正の効果が上がったから夜でも撮れる、感度を上げてもノイズが少なくて済む、クイックナビゲーションなどで操作性がこなれてきた、という感想が多いですね。

桃井:なるほど。スペック的には、ちょっと派手さに欠けているかな…という印象ですが(笑)。ちなみに、それらは従来のαシリーズのユーザーから寄せられた感想ですか?

竹倉氏:いえ、それまで他社製品を使っていただいた方も含んでいます。最新の登録カスタマーのアンケートでは、α100ユーザーの方が約4割、従来のコニカミノルタ製カメラのユーザーが約4割で、残りが他社製品からの乗り換えや買い増しという状況になっています。

桃井:やはり、α100とα従来機からの乗り換え組が圧倒的に多いんですね。まさに狙い通り、といったところでしょうか?

竹倉氏:そうですね。初期購入者の方々のデータを見ると、やはりみなさんα700を待ってくださっていたんだな、と実感させられました。

Dレンジオプティマイザーは、紅葉が美しく撮れる!

インタビュアーを務めた桃井一至カメラマン。フィルム一眼レフ時代からαシリーズを触り続けている経験を基に、α700に関しての鋭い質問を開発陣に投げかけていった

桃井:それでは、α700の機能や設計について、お聞きしていきたいと思います。僕も、α700で結構撮ってみましたが、たとえばクラスの割にボディーが軽量であったり、歴代のαシリーズと同様にファインダーが明るくてもピントの山がつかみやすい、シャッターフィーリングが気持ちいいというのが実感できました。画質面でも、新開発のCMOSセンサーと画像処理エンジンのおかげか、クリアーで立体感もあって満足のいく仕上がりだったように感じます。しかし、良い製品だけに、ちょっと気になる部分もありました。

一同:ドキッ(笑)。

桃井:先ほど、高感度時の画質がよいというお話が出ましたが、デジタル一眼全体のレベルが上がっているため、競合機種と比べてズバ抜けて高感度ノイズに優れている、というほどではなかったように感じました。もちろん、作品性を損ねたり、実用上困るほどではありませんが(笑)。α700は撮像素子や画像処理エンジンなど新しいフィーチャーが豊富ですが、そのあたりのお話をお聞かせいただけますか?

竹倉氏:他社さんもいろいろ工夫されているようですが、私どももα100の時にご指摘を受けたこともあって、今回はかなり頑張りました。ハードウエア周りで我々の技術力を駆使したのはもちろん、画像処理面でもただ単純にノイズを消すのではなく、絵のバランスを見ながら全体のクオリティを高めています。

桃井:α700の強化点といえば、Dレンジオプティマイザーがα100から大きく進化したことも挙げられますね。実際に撮ってみても、輝度差の高いシーンでの露出や階調表現の適正化が実感でき、その効果が確認できましたから、露出決定に長けていないユーザーが救われるシーンは結構あるんじゃないかと思います。ただしこの機能、撮影前にあらかじめ設定しておかなくてはならず、撮影後に行うにはRAW形式で撮ってパソコン上で処理を行うしかないんですよね。他社製品だと、撮影後にカメラ単体で同等の機能を加えられる機種もあるのですが、そのような仕組みはなぜ選択しなかったんでしょうか?

竹倉氏:それに関しては、社内でも幾度となく検討を重ねました。しかし、サイズと解像度に制約のあるカメラの液晶モニターでは、いくら高性能の液晶パネルを積んだとしても、効果を正確に確認するのはやはり厳しいかなと。撮影後に行いたい場合は、RAWファイルを基にパソコンでじっくりとやっていたく方がよい、という結論になったのです。

■Dレンジオプティマイザーの効果比較

Dレンジオプティマイザーをオートに設定して撮影した写真。単に露出補正をかけただけだと空や明るい部分の階段が飛んでしまうが、それらの階調をしっかりと残しつつ、日陰の部分の階調が出てきたのが分かる

Dレンジオプティマイザーを最大のレベル5に設定すると、日陰の部分がいっそう明るく現れてきた。効果としては分かりやすいが、あまり多用しすぎると不自然な仕上がりになることもあるので注意したい

桃井:なるほど。ちなみに、Dレンジオプティマイザーを利用して撮ったらα700はすごいんだ、というおすすめシーンってありますか?

左中氏:ちょっとシーズンは過ぎてしまいましたが、青空バックの紅葉はとてもきれいに撮れますね。紅葉の色を美しく再現しながら、青空もしっかりと出せます。α700で画像の仕上がりをコントロールするクリエイティブスタイルは、今までのシーンセレクトとは違って階調もシーンに合わせて変えているので、本当にきれいに写りますよ。

桃井:それでは、続いて操作系の話をお伺いしたいと思います。まず単刀直入にお聞きしたいのですが、撮影情報表示用の液晶パネルを載せなかった理由を教えていただけますか?

α700の開発を統括した、ソニー デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 プロジェクトマネージャーの佐藤 充氏。「α700は、JPEGの最大画像サイズでカード容量いっぱいまで連写できるので、シャッターチャンスを逃さず撮影できます」

佐藤氏:これに関しては、コニカミノルタの「α-7 DIGITAL」を踏襲した、というのが一番の理由ですね。背面の液晶モニターは、従来よりも大きさや表示品質が上がり、フォントも大きく精細になりましたので、ここで撮影情報をしっかり確認していただけるようにしています。

桃井:なるほど。あとちょっと気になったのが、シャッターボタン後方にあるボタン類の配置ですね。ストラップを付けると人差し指では押しづらく、かといって親指でも無理な姿勢になっちゃうんですよ。また、暗い場所では分かりづらいというのも気になりました。むろん、液晶モニター上で設定できるクイックナビがあるので、致命的なことではないと思いますが、せめてボタンに突起が設けられていればよかったかな、と。

佐藤氏:ボタン類の並び順に関しては、使用頻度の高さなどで検討を重ねてレイアウトしました。また、手袋をした状態でも確実に操作できるよう、ある程度ボタンのスペースを確保したというのもあります。

桃井:あとは、ユーザーの慣れ次第、といったところでしょうか(笑)。