10月3日に発売されたSotte Bosse3枚目のアルバム「moment」。ネットによるファン投票結果を参考にセレクトされたカバー曲「瞳がほほえむから」「君がいるだけで」などを収録(画像クリックで拡大)

 SMAP「世界に一つだけの花」、Dreams Come True「未来予想図II」、米米クラブ「君がいるだけで」――、誰もが知っているJ-POPのヒット曲を、ボサノヴァ~レゲエのソフトアレンジでカバーした楽曲を耳にする機会が多くないだろうか? 実はこういったJ-POPヒットソングのカバーアルバムが数多くリリースされている。COVER LOVER PROJECT、D・H・Y(Dogs HOLIDAY of Yawn)など、カバーバンドも複数登場し、企画アルバムの枚数は20枚を軽く超える。さらに、新たなプロジェクト/企画が次々に登場している状態だ。こういったアルバムは、一般リスナーからの購入以外に、カフェや飲食店、雑貨屋、イベントスペースなどでも頻繁にBGMとして使われ、このブームをさらに広げている。

 中でも、一連のカバーブームを作り上げたといってもいいのがSotte Bosse(ソット・ボッセ)だ。これまでにリリースした3枚のアルバムの総売上枚数が67万枚を超えるヒットを記録している(※各アルバムの売り上げ詳細は欄外を参照)。Sotte Bosseは、海外からの評価も高いラウンジハウスバンドi-depのリーダー&コンポーザーであるナカムラヒロシと、ヴォーカルCanaの2人による別プロジェクト。CD不況と言われて久しい昨今、目立った販促活動をしていないにもかかわらず、口コミの力だけで、これほどの売り上げ枚数を記録した例は少ない。

 J-POPの名曲をカバーするきっかけは、大手総合スーパーの店内用BGMの制作だったという。彼らがヒットした理由は、大きく分けて3つある。1つ目は“誰でも知っている曲をソフトにカバーする”というコンセプト。2つ目が“楽曲のクオリティー”。Sotte Bosse誕生の立役者にして、チーフマネージャーの森川佳宣氏は「ボサノヴァでカバーすることに目新しさがある訳ではなかったので、とにかくクオリティーにこだわった。一度聴いただけで“何だろう?”と心のどこかにひっかかるような、ただのBGMでは終わらないものにしようと意識して作りました」

 そして、ヒット最大の要因となったのが、3つ目の理由“販売の経路を周到に計算していたこと”だ。森川氏が目をつけたのは、CDや雑貨なども陳列する複合書店、ヴィレッジヴァンガードだ。狙いが功を奏して、同店での売り上げは、Sotte BosseのCD売り上げの実に約6割を占めるという。「インディーズだと、大型CDショップで長期間のコーナー展開は難しい。できるだけライバルが少なくて、長期間丁寧に展開してもらえる方法がないかと考えたんです。そこでヴィレッジヴァンガードの名物バイヤー、金田謙太郎さんに出会いました。こういったアイテムの場合、口コミで広がっていくのが理想的だったんです」(森川氏)。かくして、Sotte Bosseのアルバムはヴィレッジヴァンガード全店で40万枚という異例の売上を記録した。

 ユーザーに近い感覚を持ったバイヤーを抱え、本業ではないからこそ面白いものを自由に展開できるヴィレッジヴァンガードは、まさにSotte Bosseに最適な売り場だった。「情報があふれていて、欲しい情報をチョイスするのが困難になってきている。商品を自信を持ってオススメしてくれるセレクトショップに良いものを探しにきている人も多い」と森川氏は語る。

 売上不振の店舗が次々に潰れていく一般CDショップをよそ目に、“顧客の顔が見える”セレクトショップでSotte Bosseがヒットしたことは、音楽CDのマーケティング戦略に一つのヒントを提供したと言えるだろう。

(文/原田 星;Spoo! inc.

■Sotte Bosseのアルバムの売り上げ枚数
Essence of life』 約25万枚
innocent view』 約32万枚
moment』 約10万枚

■関連情報
・Sotte Bosseの公式サイト http://www.sottebosse.com/