Windows Vistaと搭載パソコン販売に本気で取り組むマイクロソフト

 WDLCは、眞柄氏がCEATEC JAPAN 2007のキーノートスピーチで設立を発表したもので、その時に述べた「4つのブレークスルー」(業界協業、異業種連携、サービス革新、ユーザー参加型の新しい価値の創造)を実現するためのものだ。その背景には、Windows Vistaとその搭載パソコンの販売が、マイクロソフトや関連事業者の思惑を下回っていることがある。

 WDLCには販売店も参加しているが、当日はこうした販売当事者の立場からの率直なコメントを聞くことができた。

 ヨドバシカメラの加藤忠行常務取締役は、「今は、業界全体のパイの広がりがなく、WDLCにより広がっていくことを期待している。Windows Vista搭載パソコンは各社が素晴らしい製品を作っていると思うが、売り上げは期待したほどではない。年末商戦では前年比10%増ぐらいの伸びを期待したいが、そこまではいかないのではないか。PCユーザーをもっと増やしたいが、Vistaがまだまだ浸透していないのが問題。年末にかけて取り組みを強化して、何とかやっていかなくてはならない。こちらの問題としては、社員のレベルアップが必要だと感じている。PCの分かる店員が、PC以外のデジタル機器の販売コーナーに少ないのが問題だ」と述べた。

ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでは、11月1日より1階に、年末商戦向けキャンペーン「チャレンジ! デジタルライフ2008」のコーナーを設置。Vista搭載パソコンと周辺機器の利用シナリオを体験できる。「年末商戦において、店頭であれだけのスペースをVistaの展示に割いているのは、Vistaに期待していることの表れ」(ヨドバシカメラ常務取締役の加藤忠行氏)という(画像クリックで拡大)

 ジャパネットたかたの高田明社長は、「当社はPCを10年近く販売してきた。物を作ることはできない立場だが、消費者に一番近い立場にいる企業として、物を作る企業に提案していきたい。今は、パソコンメーカーがパソコンメーカーを見て製品を開発している。もっとユーザーが本当に必要としている部分を見てほしい。また、今のPCには選択肢がない。もっと機能を絞った安価なPCなど、様々なユーザー層に向けた商品があっていい」と語った。

ジャパネットたかたの高田明社長は、同日発表されたシニア層のICT活用推進に向けた取り組みである、「アクティブシニア推進計画」のアドバイザリボードメンバーとしても名を連ねている(画像クリックで拡大)

 ビックカメラの堀越雄常務取締役は、「WDLCには、さらに業界の枠を越えてもらって、例えば鉄道会社、航空会社、電力会社なども参加してほしい。デジタルライフスタイルを実現するには、電車や飛行機の中などのモバイル環境で簡単に電源を確保できるといったインフラの整備が必要だ。それがユーザーを広げることにもなる。我々はユーザーに近い立場にいる。コンソーシアムを通じて、さまざまな要望をメーカーに提案していきたい」と語った。

 WDLCは、こうした率直な意見が異業種間で交わされる場になるようだが、こうした場を作ったことは、マイクロソフトがVistaとVista搭載パソコンの売れ行きに危機感を強く持って対処しようとしていることの現れとも言えるだろう。

 マイクロソフトの眞柄泰利氏は「私も久々にコンシューマー向け事業の現場に戻ってきたが、まず感じたのは他業種と会って話し合う機会が減っていたこと。マイクロソフトが“顔”を見せて話し合うことが少なかった。米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOが先日、秋葉原の小売店(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba)を視察したが、彼が秋葉原に行ったのは実に12年ぶりのことで、相当大きなインパクトがあったようだ。また、彼は中国でも予定になかった小売店の視察を急遽行った。こうしたリテールの販売状況を実際に見る必要性を感じている。もっと色々な人と会って話しをして、我々の言いたいことや課題を直接伝えなければダメだ」と述べ、販売業者やメーカー各社とマイクロソフトとの間に距離ができていたこと、そしてそれを解消していく決意を示した。

 さらに「スティーブ・バルマーCEOは“日本では現在の2倍のPCが販売可能だろう”と言っていて、それについて議論した。例えば、日本のPCは13万~14万円が売れ筋になっている。海外を見るとそれ以下の価格帯のボリュームゾーンがあるのに、日本にはそれがない。日本ではそこから価格がだいぶ下がって携帯電話の世界になり、中間の価格帯のものがない。携帯電話でネットやメールをしている人に聞くと、携帯電話を持っていてもやはりPCが欲しいという。こうした問題に取り組めたらと思う」とも述べた。

 幅広い異業種連携によって、マイクロソフトはPC販売を不振から脱却させるだけでなく、さらに市場をこれまでにない大きさに拡大していくことを狙っている。WDLC設立はそのための第一歩と言えるだろう。

(文・写真/湯浅英夫)

■関連リンク
・ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム http://www.wdlc.jp/
・マイクロソフト http://www.microsoft.co.jp/
・プレスリリース http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3261