このところボディやリアウインドウにアニメのキャラクターのイラスト をデコレートしている車が増えている。これは“痛車”と呼ばれる車。ひと昔前に、“デコトラ”と呼ばれた派手な電飾やイラストを描いたトラックがブームになったことがあるが、痛車は、デコトラのような雄々しい雰囲気とはテイストが異なり、ファンシーなアニメの女性キャラクターがメイン。痛車の魅力とは?

「痛い車」と書いて「いたしゃ」と読む。痛車の発祥は正確な時期は定かではないが、10年くらい前から、少しずつアニメやゲームのロゴ(パロディー含む)のステッカーを貼った車が登場しはじめた。Webサイトシブティックジャパンを主宰するMasaShiさんによると、「痛車」と言う言葉が出て来たのは、2002年頃のことらしい。「あるニュースサイトで『見ていて痛々しいヲタク車(痛車)』と紹介されたこと」が発祥だと考えられている。

「急激にその勢力が表に現れ出したのは2006年6月4日に恵那峡ワンダーランドで行われた、テレビ番組『ドリームカー倶楽部』のミーティングで集まった頃からかだと思います」と語るのは「痛車.com」を主宰するK・Sugieさん。痛車にカスタマイズする車も当初はスポーツカーが多かったが、現在はファミリーカーからバイク、自転車までもが痛車化している。これは自動車免許のない層を含め、痛車人口の広がりを裏付ける現象だ。

「この頃にはカッティングシートだけでなくカラー印刷ステッカーで元の絵そのものをフルカラーで貼ってインパクトで勝負する人やカッティングシートを多色使ったカラーステッカーも見られるようになりました。また内装としてグッズをたくさん乗せるのもこの辺りから増え、ほかの人がやっている仕様を真似たり、それならおれは! みたいな感じでエスカレートしていきました」とK・Sugieさんが語るように、当初も今もカッティングシートで、アニメのキャラクターを切り抜くのが主流だ。

モチーフはアニメやゲームのキャラクターが主流だが、それもメジャーな作品ではなく、深夜アニメが好まれる傾向にある。それも18禁シーンではない絵を貼るのが一般的。またなかには少数ながら、法人車似(バス・作業車・役場の広報車・タクシー等)のものも存在する(画像クリックで拡大)

職人的技を必要するカッティング技術

 その作り方は、画材店などで購入したカッティングシートをていねいに切り抜いて車体に張り付けるのが基本。気に入ったイラストやアニメ、ゲーム関連のロゴをスキャンして、拡大したものをトレースして、それをカッターで切り抜くのだが、小さな絵でも何時間もかかる根気のいる作業だ。そこで最近ではそれよりも目立つカラー印刷ステッカーが増えている。これなら、カッティング技術がなくても気軽に自分の車を飾ることができる。遠目には塗装しているかのごとく見えるのでインパクトも強い。一部にはシールは邪道、カッティングしてこそ痛車! という自作にこだわる職人派もいるが、痛車人口が急増した今では、てっとり早く目立つシール派や車内にフィギュアやアニメキャラクターのイラストをプリントした“抱き枕”を乗せるなど、なんでもアリの状態だ。また、すぐにはずせるように、シールにマグネットをつけているケースもあるが、すぐ元に戻せるマグネットはチキン(弱虫)と冷やかされることも少なくないという。

「家族がリアウィンドウ以外にステッカーを貼ることを一切許可してくれないので、左右の窓ガラスのステッカーは1日限りの使い捨て、それ以外は猫耳を含めてすべてマグネットで取り外せるようになっています」という、「全日本痛車&日本橋バイク連合CCO主宰のEndless Skylineさんのクルマ。マグネットは「取り外せる」「洗車がしやすい」という利点がある代わりに、風圧で剥がれる可能性があるので高速に乗れない、ステッカー1枚辺りのコストがすごく高い、毎回位置あわせしないといけないので取り付け取り外しが大変、砂の上からマグネットステッカーを貼ると車体にキズが付くので、洗車は必須と面倒なことも多い(画像クリックで拡大)