NTTコミュニケーションズは2007年10月30日、同社の運営する音楽配信サイト「MusicOcean(略称:MUSICO、ミュージコ)」上で、コピー防止機能のない、いわゆる“DRM(デジタル著作権管理)フリー”の音楽配信サービスを開始すると発表した。同サービスで購入した楽曲は、DRM方式に縛られることなく、多くのメーカーの携帯音楽プレーヤーで再生できる。コピー防止機能がないため、パソコン間でのコピーやCD-Rへの書き込みも何度でもできる。DRMフリーの音楽配信は、業界最大手のアップルに続き、国内では2番目。日本企業では初めての取り組みで、ライバル企業への波及など、今後の市場への影響が注目される。

 MUSICOがDRMフリーで配信するのは、EMIミュージック・ジャパンが提供する約10万曲。1曲あたり邦楽を260円、洋楽を190円で販売する。ファイル形式は多くの携帯音楽プレーヤーで再生できるMP3を採用。音質の指標となるビットレートは320kbpsで、今までより高い音質で配信する。従来はマイクロソフトのDRM方式を採用しており、購入した楽曲は東芝やシャープ製の一部の携帯音楽プレーヤーでしか再生できなかった。DRMフリーの楽曲であれば、携帯音楽プレーヤー市場でシェア上位のアップルの「iPod」シリーズやソニーの「ウォークマン」シリーズでも再生できるため、これらのプレーヤーを所有するユーザーの獲得も期待できる。

NTTコミュニケーションズの運営する音楽配信サイト「MusicOcean(略称:MUSICO、ミュージコ)」。EMIミュージック・ジャパンが供給する10万曲以上をDRMフリーのMP3形式で提供する(画像クリックで拡大)

アップルに続き米国ではAmazon.comが参入

 DRMは著作権を侵害する違法なコピーを防ぐための技術だが、音楽配信の場合、DRM方式が複数存在する上、制約が多く、複雑な仕組みが問題となっている。iPodは、DRM方式に独自「Fairplay」を採用し、音楽配信サービスは「iTunes」を利用する。ウォークマンは国内では独自の「OpenMG」方式を採用し、音楽配信サービス「Mora」を利用する。このように携帯音楽プレーヤーと音楽配信サービスが固定化した状況では、携帯音楽プレーヤーを異なるメーカーのものに買い替えた場合に、新たに曲を購入し直さなければならない。また、現状のDRMは、CDへの書き込み回数が制限されているほか、パソコン間のコピーが難しいなど制約が多い。最近は、携帯電話など音楽再生機能を備えた機器が増加し、購入した楽曲が再生できるかどうかいちいち確認しなければならないなどの問題も目立ってきた。

 DRMフリーの音楽配信サービスは、5月からアップルが全世界で、9月からはネット小売り大手のAmazon.comが米国で開始するなど、今年に入ってから参入が相次いでいる。アップルは「iTunes Plus」という名称で、日本では1曲あたり150円または200円で販売。ビットレートは通常の曲の2倍の256kbpsで、AAC形式で提供する。MUSICOと同じくEMIレーベルの楽曲を中心にラインアップをそろえる。国内で提供する楽曲数は正式に公表していないが、米国では200万以上の曲を提供する。Amazon.comは、2万のメジャーおよび独立系のレーベルから楽曲の提供を受け、200万曲以上をDRMフリーで提供する。ビットレートは256kbpsで、ファイル形式はMP3。1曲あたり89~99セントで販売する。

音楽配信最大手のアップルは、「iTunes Plus」という名称でDRMフリーの楽曲を提供。10月に値下げし、1曲150円または200円で販売する(画像クリックで拡大) 米国でDRMフリーの音楽配信を手がけるAmazon.com(画像クリックで拡大)

 ただ、不正コピーの横行や売上への影響など懸念材料は少なくない。MUSICOでは、購入した音楽ファイルに独自のトラッキングIDを埋め込み、もしファイル交換ソフト上などに不正にファイルが流出した場合、どのファイルかを特定できるようにして、著作権侵害の防止に努めるというが、効果は未知数だ。また、EMI以外の大手レコード会社がDRMフリーでの楽曲提供に踏み切っていないのも課題だ。今後、DRMフリーで楽曲を提供する大手レコード会社が登場するかどうか、動向に注目したい。

(文/三浦 善弘=nikkei TRENDYnet)

■関連リンク
・MUSICO http:/http://musico.jp/dressphile.jp/
・NTTコミュニケーションズ http://www.ntt.com/
・ニュースリリース http://www.ntt.com/release/2007NEWS/0010/1030.html