ここ数年、インターネット上の誹謗中傷が増え続けている。掲示板やブログの普及で、書き込む先も増え、加害者は匿名だということに安心して、被害者に対するいわれない悪口を不特定多数の目にさらし、卑劣な手段で傷つけ続ける。

 こんな陰湿な行為の標的にされてしまったら、どうしたらいいのだろう。自分でなくても、家族や子供がそんな目にあったら? 心を痛め、生活に差し障ったり、生きていけるだろうか……。いや、心を強く持とう。悪質な相手を特定し、謝罪させ、慰謝料を請求し、二度とくりかえさないようにさせよう。卑怯な相手を野放しにしてはいけない。

 そのためにはなにを準備し、どのような流れで手続きすればいいのだろうか。2ちゃんねるをはじめとするネット訴訟関係の処理を数多く手がける久保健一郎弁護士にお話を伺った。

●警察への名誉毀損、誹謗中傷等に関する相談は増加している

都道府県のサイバー犯罪相談窓口等に寄せられたサイバー犯罪等に関する相談の受理件数。警察庁広報資料「平成18年のサイバー犯罪の検挙及び相談状況について」より作成。

1、まずは民事手続きから始めるのが現実的

 親しい友人から、ネットにあなたのひどい悪口が書かれている……と、教えられたり、自分のブログやHPにいわれのない嫌がらせが書き込まれたり。そんなことを知ったら、ショックのあまり茫然自失に陥ってしまいそうだ。だが、犯罪だと思える場合は、そこで躊躇したり手をこまぬいていないで、迅速に対処しなければならない。

 「被害届を出すのは一つの方法ですが、誹謗中傷被害の場合、警察が迅速に出動してくれるケースは、私の経験上あまり多くありません」

 犯罪予告や脅迫など、生命や身体に対して危険が迫っているような場合以外は、よほどでないと迅速には動いてくれないと言うのだ。なぜなら、警察の場合、個人の精神的な問題は傷害や殺人などに比べると、どうしても軽いと判断され、後回しにせざるを得ないから。仕方ないことかもしれないが、一刻も早く、書き込みを消し、犯人を特定したい。では、どうしたらいいのか。

 「私が考える流れは、まず民事的に追跡して、発信者を特定し、それから、なおも処罰を求める意思があれば刑事告訴する。これが現実的だと思っているんです。刑法では、誹謗中傷という犯罪ではなく、誹謗中傷された被害者が、名誉毀損、侮辱、信用毀損、業務妨害、などの罪で処罰を求めるということになります。ただ、インターネット上で匿名で行われた誹謗中傷の場合、加害者を処罰してくださいと被害届を出しても、匿名によるサイバー犯罪の性質上、普通の犯罪とは捜査方法が異なりますから、簡単にはいかない。個人に対する一般的なネット上の名誉毀損、侮辱、信用棄損は、最終的に刑事告訴するとしても、まず、民事から追跡開始するのが早いと思います。

 なぜなら、民事上でも、1、書いた本人をつきとめるだけの資料の提供(情報開示請求)、2、該当の書き込みなどを消す(削除要求)、この2点は、比較的迅速に対処することができるからです。

 私の場合は、まずこれを目標に追跡して、浮上した加害者・発信者に対して、損害賠償請求や、謝罪広告を要求することになります。その上でなおも刑事処分を求める意思を有しておられる場合は、刑事告訴……たとえば、侮辱罪(刑法231条)や、名誉毀損罪(刑法第230条)などの処罰を求めていくことになります」