今月17日に発売されたキリンビールの第3のビール「スパークリング ホップ」は香りを強調しているのが特徴。この開発を指揮したのが、キリンビバレッジで「ファイア」「生茶」「アミノサプリ」と飲料のヒット商品を連発した佐藤 章氏だ。狙うのは、20〜30代の若年層。ビール離れが進んでいるこの世代に、ヒットメーカーは第3のビールで何を仕掛けようとしているのか。

「苦さ」を超えなくても、酒が楽しめる
大人の味はビールの独壇場ではなくなった

キリンビール マーケティング部 商品開発研究所長の佐藤 章氏

日経 トレンディネット(以下、Tnet) なぜ若者にターゲットを絞ったのでしょうか。

佐藤氏 ビール離れが進んでいるのが、20〜30代の若者層なんです。

 その理由としては、強力なライバルが増えたことが大きい。昔は若者にとって、“苦(にげ)え” ビールが大人の一歩。それを我慢することで、大人の味が分かるようになる。つまり、「ビール=酒=大人の味」という図式があり、親や先輩など、それを伝える人がいて、代々継承されていたんですね。

 その流れが変わったのは、チューハイやカクテルなどのRTDが台頭してきてから。酒がジュースの延長で飲めるようになったんです。つまり、『苦さ』を超えて酒を楽しむトレーニングがいらなくなった。

 ここで、大人の味はビールの独壇場ではなくなりました。

 注釈 ※RTD(Ready To Drink)は何かで割ったり、グラスに移したりせずにそのまま飲めるアルコール飲料のことで、チューハイやカクテルもこの部類に入る


疲れたからビールやめてアイス?
ライバルは、酒だけではない

ビールが独占してきた「時間」は、さまざまな飲料との奪い合いに(図版はキリンビールの資料をもとに作成)

佐藤氏 全盛期だった90年代は、ビールがあらゆる「時間」を独占していましたね。スカッと気分を発散したり、ゆったり寛いだり、大勢で盛り上がったり、贅沢な気分に浸ったり……。でも、スカッと発散したいときには炭酸飲料、ゆったり寛ぐときには焼酎、大勢で盛り上がるときにはチューハイ、贅沢な気分になりたいときにはワインやシャンパンと、ビールの『時間』はどんどん奪われている。「何となく買いそびれてしまったので炭酸にした」「仕事帰りにビールを買おうとコンビニ寄ったけど、疲れていたからアイスにした」といった若者までいる。私の世代だと、信じられないことですが。

 しかも、ライバルは食品だけじゃない。調査をすると、「夜はネイルしたり、いろいろやりたいことがあるから酔いたくない」「飲み会をやろうと思ってケータイにかけたら、すっかり話し込んで用が済んでしまった」といった声もある。ヨガ、グルメ、ネイル、アロマ、ゲーム、メール……若者にとってお酒よりも興味のあるものがどんどん増えて、酒以外のライバルに「時間」を奪われているのが現状です。

 今回、業務用の瓶タイプにこだわったのも、クラブやカラオケなど、みんなで楽しむ「時間」に積極的に入っていきたいからなんです。

Tnet なぜ本家本元のビールじゃなく、第3のビールなのですか。また、第3のビールだと「のどごし感」や「麦のコク」など、ビールらしい特徴を強調したものが売れているイメージがあり、その流れとは異なる印象があるのですが。