(文/長坂 道子)

 記録的な寒さと積雪に見舞われた今年のスイスの冬も、待ち焦がれた春の気配とともにようやく終わりにさしかかりつつある今日この頃。パン屋さんの店先にはウサギをかたどったチョコレートが並び、花屋さんには水仙やクロッカスの鉢植えが色とりどりに勢ぞろいして、イースター気分を先取りしている。

 スイスのイースターといえば、まず連想されるのが国内各地で一斉に催される各種コンサート。有名なバッハの「マタイ受難曲」はイースター・コンサートの定番中の定番だが、大ホールから教会まで、大小さまざまの会場で、オーケストラから室内楽、合唱など、それぞれの分野で「春の訪れ」「復活」を意識したコンサートが、まさに木々が一斉に芽を吹くように数多く開催され、人々は1枚薄着になってこうしたイベントに繰り出す。宗教的な「復活」のイメージが、待ち焦がれた春の到来がもたらす喜びとシンクロし、スイス各地で紡がれる音楽の中にも、そうした気配を感じずにはいられない。ヨーロッパで迎える春の醍醐味を確実に保証してくれるのが、こうした一連のコンサートなわけだが、そんな中、突出したビッグイベントなのが、今回ご紹介するルツェルン・フェスティバルだ。