エキセントリックな田中康夫氏

 そのほか印象的だったのは、80年に学生作家として『なんとなくクリスタル』でデビューした「ヤスオちゃん」こと田中康夫氏だ。私自身何度か担当した事があり、原稿以上にそのエキセントリックなキャラクターに圧倒された。

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 なにしろモーターショーでは片っ端からコンパニオンに電話番号を聞きまくり、それも異様な記憶力から上3ケタ(当時はいまより1ケタ少なかった)を聞くだけで、彼女の住んでいる地域をあて、お友達になってしまうのである。

 私はこんなナンパのやり方があるのか! と衝撃を受けると同時に、その個性と行動力、頭の良さに恐れをなした。

 だからその後の活動にも納得である。彼はそもそも作家の枠にも、政治家の枠にも囚われない人物であり、今後別方面にいく可能性すらある。とにかく並外れたパワーと感性と食欲を持ったウェポンのような人物。こういう人こそ“作家”であり、逆に自分の器の小ささがよく分かった。