「独身にかえる」の意味を込め、かえるのついたハンマーで指輪を砕く(画像クリックで拡大)

 司会が離婚に至る経緯を説明、離婚経験のある友人がスピーチをし、ケーキ入刀の代わりにハンマーで指輪をたたき割る――。こんな演出で進行する「離婚式」が話題となっている。

 離婚式を手がけるのは日本初の離婚式プランナーである寺井広樹さん。きっかけは、大学時代の先輩が結婚2年で離婚したことだった。「結婚式はあるのに何で離婚式はないのでしょう」とかねてからの疑問をぶつけたところ、「あるわけないだろう」と笑われた。だが、その後で先輩が「でも、やってみたら何か変わるかもしれないな」とつぶやいたことが印象に残ったという。

 その日のうちに、面識のあった先輩の妻にも電話し「離婚式をしてみないか」と掛け合った。はじめは難色を示していた二人だったが、「真面目にやってくれるなら」と了承。昨年4月に、初の離婚式が取り行われた。

 その後、口コミで希望者が集まり、昨年は計6組が“挙式”。専用のサイトなどは設けず広告も一切行っていないが、今年に入ってからは4組が挙式、700件以上の問い合わせがあり、マスコミからの取材申し込みも相次いでいる。

 寺井さんが手がける「離婚式」企画は3つ。新郎新婦ならぬ“旧郎旧婦”が参列者を招く「離婚式」(演出によって異なるが、予算は平均で5~6万円程度)と、離婚した夫婦のどちらか片方が友人を招く「離婚パーティー」(同3~5万円)。そして、浅草で別々に人力車に乗り、離婚式を行う「離婚屋敷」まで向かう「離婚式ツアー」(参加者全員が一律3000円)だ。「離婚式ツアー」はフレンドリートラベル(東京都中央区)が窓口となっている。

 これまで離婚式を挙げたうち、最年少は21歳同士、最年長は57歳と56歳の夫婦。20代~50代まで、年代による偏りはない。離婚式の申し込みは8割が男性だが、離婚パーティーの申し込みは9割が女性という特徴も。

 一見、単なるパフォーマンスと思われがちな離婚式だが、実際に夫婦の両親や子どもも立ち合い、厳かな雰囲気で進行するという。「感動した」という声も多い。

 「式の最初で離婚に至った経緯を簡単に説明します。了解は得ていても、実際に多くの人の前で離婚理由が明らかにされるのはフラストレーションが溜まるもの。それが、式が進行するにつれて次第に場の空気が和み、ハンマーで指輪を打ち砕く瞬間に旧郎旧婦の表情がパッと明るくなります。気持ちが吹っ切れるのだと思います」(寺井さん)。

 意外な後日談もある。挙式したうちの2組は、式後に離婚を思いとどまった。また、参列者同士でカップルになる率も高い。寺井さんは「前者は、参列者が集まることで、自分たちがどれだけの人に支えられているのかを再認識するのでは。後者は、参列者にとっても恐らく生まれて初めての経験で、どんな顔をしていいのかわからないと思う。一緒に非日常の体験を共有することによって、芽生えるものがあるのでは」と分析。いつか「離婚屋敷」が観光名所となることが目標だという。

(文/小川たまか=プレスラボ)