最近、各地のイベントで行われるようになった“プロジェクションマッピング”。その注目度は高く、開催されるたびに話題となっている。プロジェクションマッピングについては、2012年に東京駅で開催された「TOKYO HIKARI VISION」ではじめてその存在を知った人も多いだろう。東京駅・丸の内駅舎をスクリーンに見立てた豪華な映像ショーは、数多くのお客が集まり、当時、大きなニュースとなった。  その、TOKYO HIKARI VISIONを手がけ、プロジェクションマッピングの第一人者として数多くの作品をプロデュースしているのがNAKED(ネイキッド)の村松亮太郎氏だ。「TRENDY EXPO」での講演を前に、ヒット作を生み続ける秘密に迫った。

NAKED(ネイキッド)代表、村松亮太郎氏
NAKED代表。クリエイター。
TV/広告/MVなどジャンルを問わず活動。長編映画4作品を劇場公開、短編作品と合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。主な作品に、東京駅の3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』、東京国立博物館 特別展「京都-洛中洛外図と障壁画の美」プロジェクションマッピング『KARAKURI』。山下達郎30周年企画『クリスマス・イブ』MV&ショートフィルム&マッピングショー、星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳『Gift -floating flow-』総合演出、『TOKYOガンダムプロジェクト2014ガンダムプロジェクションマッピング "Industrial Revolution"-to the future-』映像演出、auスマートパス presents 進撃の巨人プロジェクションマッピング「ATTACK ON THE REAL」演出、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」タイトルバックなど。映像のみならず空間全体の演出を手がける
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――プロジェクションマッピングをやることになったキッカケは?

村松亮太郎氏(以下、村松): まず、よく勘違いをされやすいのですが、私は“プロジェクションマッピング屋”ではないのです。もともと映画が好きで、役者の活動をしていくうちに自分で作ることにも興味を持ち、1997年に会社を立ち上げました。フルデジタルで映画を制作、納品まですべてを担当した最初の世代の会社だと思います。それから今まで、映画以外にもミュージックビデオやWeb、CG、デザインと様々なものを制作しています。

 その都度、見られ方は変わるのですが、自分ではまったく違うことをしているという感覚はありません。「クリエイティブカンパニー」であることが自分たちのアイデンティティであって、表現をするためのツールやフィールドにはとらわれないでやるというのがスタンスですね。プロジェクションマッピングも表現方法の一つでしかなく、特別視しているわけではありません。常に新しい技術を取り入れてチャレンジしていくことも表現の手段として当たり前のことなので。

理屈ではなく感覚を大切にする

村松: ただ、AR(拡張現実)にはそれほど反応しなかったのに、プロジェクションマッピングにはかなり反応したのは確かです。理屈ではなく感覚から入るタイプでして。なぜ反応したのかは、その時はよくわからないのです(笑)。実際にやってみてから思ったのですが、私自身、映画がすごく好きで自分でも作ってきたわけですが、映像は今まで、フレームの中でしか表現できなかった。それが、プロジェクションマッピングによってまったく新しい可能性が生まれた。映像がフレームを出たときにどんなことが起きるのか、どんな表現ができるのか、そこに可能性を感じたのだと思います。

東京ミチテラス2012 TOKYO HIKARI VISION。((c)東京ミチテラス2012)
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――プロジェクションマッピングを作るのに技術的に難しかったこと、大変だったことはなんですか。

村松: プロジェクションマッピングをご覧になった方は、みなさん衝撃が大きいようで、よく技術的なことも聞かれます。ただ、ちょっと乱暴かもしれませんが、私自身は“建物に合わせて投影しているだけだから”って思っていて(笑)。細かく言うと当然色々あるのですが、プロジェクターの出力が大きくなったからできるようになったのも事実ですし。

技術の新しさよりも体感の新しさ

村松: 例えば「ハコビジョン」。あれもとても話題になったのですが、実は技術的には新しくもなんともなくて、非常にレトロな「ローテク」なのです。手のひらサイズの箱の中に立体的な映像を映し出すことで、今までにない体験を提供できた。この新しさがあったから、ヒットした。プロジェクションマッピングについても、技術的なことよりも、映像がフレームから出て、どんな新しい体感をもたらせられるかを考えることのほうが大切だと思います。

――新しい体感を生み出すには、企業や自治体などパートナーの協力も欠かせないのでは?

村松: そうですね、我々が制作したプロジェクションマッピングで東京駅の次に代表的な作品となったのが、2013年に東京国立博物館で開催された「京都─洛中洛外図と障壁画の美」で行ったものです。これは日本テレビ開局60年を記念したもので、最初は「お堅い場所」でしかも国宝・重要文化財を対象にしていいのか、戸惑いました。ただ、日本テレビや東京国立博物館から「今までは重要文化財ということで大事に守られてきたけれども、当時はアバンギャルドな存在だったはず。その精神をリスペクトして、その感覚で今回もやりましょう」と言われて、吹っ切れました。

伝統と革新の融合で新しい世界を実現

村松: 「洛中洛外図屏風」から500以上もの人物を切り取ってプロジェクションマッピングで動かしたのですが、あの作品で一気に使い方が発展しました。建物に投影するだけのプロジェクションマッピングから一歩踏み込めた気がします。また、重要文化財という伝統的な作品に、プロジェクションマッピングという新しい技術を組み合わせることで、より対比が大きくなり、作品が浮き上がって見えた。ある種の新しさが生まれたと思います。
 あの作品については、これまで興味を持たなかった人たちにも、プロジェクションマッピングを使うことで来場するきっかけを作れたと思います。実際にイベントにはたくさんの若い人たちも訪れてくれました。そういったことが評価されて、その後、美術の教科書にも載ることになりました。これはとても名誉なことでうれしく思います。

(構成/舟橋亮人=スプール、持田智也 写真/皆木優子)

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