東京・墨田区に生まれ育った、風船メーカーの三代目社長、斉藤靖之氏。父親でもある先代社長が病に倒れ、2009年に社長就任。少子化で国内の風船市場が縮小する中、突然、経営のすべてを任された斉藤氏を支えてくれたのは、「地元のものづくり産業の経営者」だった。今では、全国各地の経営者ともつながり、地域産業の活性化目指して活躍中。 TRENDY EXPOにご登壇いただく斉藤氏に、企業経営者が地元産業活性化を目指す理由と、成功の秘訣を聞いた。

斉藤靖之(さいとう・やすゆき)氏
マルサ斉藤ゴム社長。1975年東京都墨田区生まれ、1998年電気通信大学機械制御工学科卒業、同年家業継承のための修行のため萬綱商店入社、2001年マルサ斉藤ゴム入社、2009年より同社社長に就任。2013年、千葉県銚子市にある日本で唯一の手作りゴム風船工場を取得し、手作りでしか出来得ない技術を用いた、子供だけでなく大人やお年寄りにも喜んでもらえる「ふうせん」を製造し、「ふうせんバレー」など風船の新しい市場作りに国内外で取り組んでいる。
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――風船メーカーを経営しつつ、地元(東京都墨田区)のものづくり産業活性化を目指し、いろいろと取り組んでいらっしゃいます。どのような活動をされているのでしょう。

斉藤靖之氏(以下、斉藤): 墨田区や地域の企業経営者と協力して、産業の活性化だけでなく、後継者・若い経営者の育成、ものづくり企業が中心となった墨田区のブランド化といった活動をしています。地域の廃材を活用する新しいビジネスプロジェクト「配財プロジェクト」(一般社団法人配財プロジェクト)や、中小企業の事業継承者など地域産業の次代を担う若手人材育成を目指す「フロンティアすみだ塾」(すみだ次世代経営研究協議会)、墨田区が共催する「スミファ」(「スミファ」実行委員会)などがその中心です。特に、昨年実行委員長を務めたスミファには力を入れていて、今は2015年11月21日、22日に実施する第4回スミファの準備中です。

――「スミファ」とは、どのような活動ですか。

斉藤: 一言で説明すれば、墨田区のものづくり産業が協力して実施するオープンファクトリーです。墨田区は江戸時代から続く「ものづくり」と「職人」の町で、かつては1万社を超える製造業の企業がありました。しかし今では3000社を下回り、減少傾向は続いています。ものづくりに携わる企業が減っている理由はいろいろありますが、その大きな理由として、後継者不足が挙げられます。私のように家業を継ぐ者も必要ですが、区外の人たちにも墨田のものづくりを知ってもらい、新しい経営者として、地元の産業発展を目指す人材が増えたらと考えました。そのためにはまず、墨田のものづくりを知ってもらうことから始めよう、ということで始まったのが、スミファの活動です。

――オープンファクトリーといえば、東京都大田区や新潟県三条市などが知られています。スミファの狙いは、どのあたりにあるのでしょう。

斉藤: 地元だけでなく、区外の人たちに「墨田のものづくり」を知ってもらう、というのが最大の狙いです。その中でもデザイナー、プロデューサーというような、ものづくり産業の技術や産品を生かし、新しい発想、新しい事業展開につなげられるような人材と、地元企業がつながることを目標にしています。墨田区には、企業規模は小さいけれども、独自の製造技術を持つ企業がたくさんあります。しかし、その企業の存在はまったく知られていません。個々の企業が広告宣伝するには、資金、人材などの理由で限界があります。そこで、みんなで集まって、「何を」「誰に」伝えるべきなのかを考えました。