5年かけて行われてきたTPP交渉がこの10月、ついに合意にたどり着いた。TPPとは環太平洋経済連携協定のことで、日本と米国、オーストラリア、ベトナム、マレーシアなど太平洋を囲む12カ国で構成される巨大な自由貿易圏を生み出す国際協定を指す。

 2011年に日本がこのTPP交渉に参加することを決めた当時、国内は大変な騒ぎになった。TPPは秘密交渉なので情報があまり入ってこないうえ、当時分かっていたことは「TPPとは加盟国間での全ての農業品・工業品の関税を撤廃するとともに非関税障壁も同様に撤廃される」という説明だったからだ。

 ところが終わってみればまさに“大山鳴動してネズミ一匹”で、日本の農業が聖域にしたかった「米」「麦」「肉」「乳製品」「砂糖」の重要5品目は交渉の結果、一定レベルの関税を残すことができ、米やバターなどに追加される輸入枠も小さく抑えることができた。

 特に米の場合、高関税は引き続き残るし、追加された米国などからの輸入枠も全国のコメ生産量の1%に満たない。そして政府はそれらの米を基本的に備蓄米に回すとのことなので、米の生産農家にとってはそれほど大きな打撃はない形で交渉が終結したわけだ。

 そもそも交渉の重要な相手である米国とオーストラリアが農業国なので、かれらも最初から“例外なき自由貿易圏”など目指していなかったはずだ。米国はトウモロコシや砂糖、綿花の保護を狙うはずだし、生態系の維持に慎重なオーストラリアが海外産の農産物を自由に輸入させることなどありえない話だったわけだ。

 TPPは秘密交渉なので、ほかの分野を含めてどこまで日本が譲歩したのかという詳細な情報はまだ出てきていない。そこが若干不安な点ではある。とはいえ、今回開示された農水省関連の交渉結果に関していえば、農家にとって大打撃というほどではない、ある程度合理的な範囲内の条件で交渉が落ち着いたと見ることができるのではないだろうか。

「米」「麦」「肉」「乳製品」「砂糖」の重要5品目は交渉の結果、一定レベルの関税を残すことに。写真:写ぁ・アズナブル/PIXTA(ピクスタ)
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