2010年10月、東京・御徒町に1号店のオープンを皮切りに、現在は都内や神奈川県、サービスエリアや駅のプラットホームにまで合計7店舗を展開する日本百貨店。創業者であり、自らバイヤーとして全国を飛び回る鈴木正晴氏に「いいものを店舗で発信するコツ」を聞いた。

鈴木正晴(すずき・まさはる)氏
日本百貨店を運営するコンタンの代表取締役。伊藤忠商事株式会社のアパレル関連の部門で、素材、生産から小売部門まで幅広く担当。その後ブランドマーケティング事業部を経て2006年3月退社。同年4月にコンタンを立ち上げ、国内外のブランドのブランディング業務を行う。2010年12月、東京都御徒町に「日本百貨店」をオープン。2013年9月に吉祥寺、2014年3月にたまぷらーざ、同年7月に池袋に出店。また2013年6月には食品専門の「しょくひんかん」を秋葉原にオープン。“日本の優れもの"をコンセプトに食・雑貨・衣料雑貨など、全国からこだわりの商品を集め、作り手と使い手の出会いの場を提供している
[画像のクリックで拡大表示]

――「日本百貨店」はどんなお店でしょう?

鈴木正晴氏(以下、鈴木): テーマは「日本のモノづくり」と「日本のスグレモノ」です。作り手の人たちにとっては、発表の場であり、出会いの場でありたいと思っています。

――今日も特産品のデモンストレーションをしている方がいますね(インタビュー当日は日本百貨店しょくひんかんで取材)。

鈴木: あの方は滋賀から来てくれた沖島の魚の加工屋さんです。今どんどん漁師さんが廃業する中で、彼と取引している漁師さんが現在4軒いるそうです。「漁師さんが辞めるまで僕も止めません」というのを聞いて、いいなあと。そういう話とか商品の説明とかお店でしてくれないかなと言ったら、商談してすぐに来てくれました(笑)。

――作り手さんが商品を説明することで、よりお客さんにも良さが伝わる?

鈴木: 生産者さんが来てくれて、自分で話してくださるとそこに人がまた集まって、ヒットしていくというケースはとても頻繁にあります。それに、作り手さんにとってもお客さんと話したことで発見があり、次の商品に生かせるというメリットもあります。うちのお店はデモンストレーション以外にもいろいろな作り手さんが来てくれるので、偶然の出会いが新商品につながることも。

――それは日本百貨店ならではの化学反応ですね。

鈴木: 沖縄の塩の生産者さんがたまたまお店に来たときに、島根の金平糖屋さんと出会って“一緒にやろうよ”となったり、パッケージでずっと悩んでいた大福屋さんがたまたまうちのお店でデザイナーさんと出会って新パッケージを依頼したこともありました。そういうのを聞くとすごく嬉しいです。

東京・秋葉原の線路下にある日本百貨店しょくひんかんの店内。全国の美味しいものが所狭しと並んでいる
[画像のクリックで拡大表示]

――デモンストレーションをしたいという生産者さんは、基本的に大歓迎?

鈴木: はい、場所が空いていればウェルカムです。「展示会で東京に来たけど3時間だけ時間があるから立っていい?」という人もいます。

――日本百貨店のスタッフがデモンストレーションすることもありますよね。

鈴木: はい、やってみて成功したのは、「たま麩」という商品です。見た目は可愛いけどどう使ったらいいかわからない、食べると美味しいのにぜんぜん売れない。スタッフが「こうするといいんですよー」とデモンストレーションをしたらけっこう売れて、今はデモンストレーションはしていませんが、安定して売れ続けています。リピーターや口コミで広がっているのだと思います。こういった「商品を知ってもらい、安定して人がきてくれる」という試みは、これからもどんどんやっていきたいですね。

デモンストレーションを起爆剤に安定した売れ行きを続ける愛知県の「たま麩」
[画像のクリックで拡大表示]

――立ち上げ当初から、「出会いの場」というコンセプトは固まっていたのですか?

鈴木: いえいえ、日本のモノ作りを応援しようという思いはもともとありましたが、お金もない、スタッフも多くない、やれることは何だろう、と考えているうちにようやく見えてきたことです。