食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
 女性の中には、先天的に子宮に問題を抱えていて、子どもを望めないケースもあります。これに対し、研究が進み、スウェーデンでは子宮移植による出産の成功例が報告されています。さらに先月、英国でも子宮移植が倫理審査で承認されて話題を呼んでいます。

英国で子宮移植が倫理審査により承認! 選択肢が増える?

Photo:khunaspix
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 2015年9月末、英国で10例の子宮移植が倫理審査により承認されたというニュースが、世界中で報道されました。これは2014年10月にスウェーデンで、世界で初めて子宮移植を受けた女性が妊娠・出産に成功した例に続くもので、英国では2016年春から子宮移植の臨床試験が始まります。移植が成功すれば、2018年初めに、英国初の子宮移植を受けた女性が赤ちゃんを出産する予定です。

 英BBCによると、子宮移植チームを指揮するのはプロジェクトに19年間取り組んできた、ロンドンのクイーン・シャーロット&チェルシー病院の婦人科医リチャード・スミス博士です。

 生まれつき子宮がない女性は、5000人に1人います。また子宮を持って生まれてきても、がんなど病気のために失う女性もいます。スミス博士は、「子どもがいないことは、カップルにとって不幸の要因になるかもしれません。(英国では)これまでは養子縁組か代理出産だけが選択肢でしたが、子宮移植は妊娠の可能性をもたらすのです」と話しています。

■参考文献
BBC「Womb transplants given UK go-ahead

スウェーデンで2014年に世界初の成功例

 スウェーデンでの子宮移植による妊娠、出産の成功例については、2014年10月6日に医学雑誌「The Lancet」の電子版に報告されています。

 子宮移植を受けた35歳の女性(レシピエント=臓器を提供される人)は、ロキタンスキー症候群で、生まれつき子宮がありませんでした。子宮を提供した女性(ドナー=臓器を提供する人)は、2回の経腟分娩を経験し、約7年前に閉経した61歳の友人でした。

 レシピエントは、移植した子宮への拒絶反応(レシピエントの子宮として受け入れられず、異物として排除されること)を防ぐために、免疫抑制剤を服用しました。移植から1年後に、体外受精で作成した胚を移植し、妊娠。妊娠中、胎児に異常はありませんでしたが、31週(※)で母体に妊娠高血圧症候群を認めたため、帝王切開で赤ちゃん(1775g)が産まれました。

※通常、出産予定日は妊娠40週0日を指し、妊娠37週0日~41週6日の間の5週の間に出産することを「正期産」という。


■参考文献
The Lancet「Livebirth after uterus transplantation