バス代替を目指したが、課題を抱える多摩都市モノレール

 もういっぽうの多摩都市モノレールも、運営主体は第三セクターの多摩都市モノレール。東京の西部を曲がりくねりながら南北に走る路線は、北端の上北台駅と南端の多摩センター駅の間の16kmである。その間に駅は19駅。大阪モノレールが21.2kmに14駅なのに対して、路線が短い割に駅数が多く、つまり駅の間隔が短い。

 このことが、大阪モノレールとの性格の違いを示している。多摩都市モノレールが走る地域は、多摩丘陵と呼ばれる丘陵地帯の中を都道が縫うようにして結んでいる。もともと東京は、都心と郊外を結ぶ放射状の路線が先行して発達し、郊外同士を結ぶ環状線が弱いという特徴を持つが、この地域もモノレール開通以前は、環状線に相当する南北の輸送手段は都道を通る路線バス頼みの状態だった。

 1960年代後半から宅地開発が進みだし、さらに帝京大学、中央大学などのキャンパスも創立され、この地域の輸送需要は一気に増えた。ところが丘陵地帯の都道は抜け道が少なく、急速な拡幅も難しかった。結果的に都道は、慢性的に渋滞が起きやすい状態となり、バスの定時運行が難しくなってしまったのである。

 そこで、多摩丘陵地域の交通需要を一手に引き受ける大量輸送手段として、モノレールが採用されたわけである。モノレールなら既存の都道の上に高架の軌条を作ることができるし、前回述べたように高低差のある丘陵地帯でもまっすぐに路線を通すことができるからだ。

 つまり、多摩都市モノレールは、「輸送力が大きくて、渋滞が起きないバス」として構想されたわけである。このことは実際に乗ってみるとはっきり分かる。大阪モノレールに比べると、多摩都市モノレールは遅いのだ。

 表定速度は26.7km/h。主に都道の上を通っているために急なカーブが多く、駅間距離が短いので速度を出せるところも少ない。もうすこし真っ直ぐ路線を通せなかったものかと思うが、大阪モノレールのようにちょうどいい環状に走る高速道路などはないし、この地域はもともとこれらの都道を中心に発達してきたので、乗客のニーズを考えても都道の上に路線を作るしかなかったのだろう(もちろん前回述べた、下の道路と一体と考えて、モノレールに補助金を出すという政策も関係してはいる)。乗ってみると感覚は、郊外のバスそのものである。

 これは新しい路線延伸計画を見てもはっきり分かる。現在の北側の終着駅である上北台駅から真っ直ぐ北に向かうと、多摩湖を越えて埼玉県に入り、距離2kmほどで西武線・西武球場前駅がある。環状線の機能を優先するなら、こちらにまっすく路線を延ばすべきだ。しかし実際の計画は上北台駅から西へ90度曲がってJR東日本・八高線の箱根ヶ崎駅方面に延伸するとなっている。これにより立川方面への乗客数は3割増加するという。現在は路線バスと八高線を乗り継いでいるユーザーを取り込む考えだ。

 また、南側の延伸も、曲がりくねった主に都道の上を通して、小田急・町田駅に至るというものだ。こちらは町田に至る丘陵地域のバス路線の代替を狙ったものである。将来的な構想として、多摩センター駅から分岐して、八王子に至る路線も検討されているが、こちらも同様に曲がりくねったバス代替ルートだ。

多摩都市モノレール延伸構想(広域交通ネットワークについて:東京都、平成27年7月:pdfファイル、より)
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 ところが、多摩都市モノレールは、このバス代替の大量輸送手段としての役割だけに徹することが難しいということが問題だ。

 もともと東京は南北の交通が都心と郊外を結ぶ東西方向に比べて、極端に弱いという欠点を持っている。つまり、モノレールが複数の放射状路線を結ぶものになるなら、主な目的は「バス代替」といいつつ、同時に都市郊外の環状線としての役割も必然的に課せられてしまう。

 大阪モノレールのところで書いたように、環状線が満たすべき条件は、「速い」ことと「放射状路線との乗り換えの便が良いこと」だ。ところが多摩都市モノレールは残念ながらこの2つを満たしていない。遅いのは路線の形状から仕方ないともいえるが、多摩都市モノレールの場合、放射状路線との乗り換えに時間がかかるのだ。