今年の2月、ちょっとした好奇心でヤマハ発動機のモニター募集に応募したところ、なんと当選してしまった。モノは新型の三輪スクーター「トリシティ」。3月から5月にかけて2カ月間、モニター車両を手元に置いて、自由に乗り回して構わないという、なかなか太っ腹な企画である。けっこうな倍率をくぐり抜けたようで、オートバイ好きの私としては今年一年分の運を一気に使ったような気分。

 かくして、3月13日から5月26日まで、我が家にトリシティがやってきた。その間に約1000km弱ほど走行し、ロングツーリングにも出かけた。今回は、そのインプレッションを中心に書いていく。

前のタイヤが2つあるヤマハの「トリシティ」
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 結論を先に書いておくと、これは従来のオートバイとは異なる、とてもおもしろい特性を持った乗り物だ。バイクが怖くて乗れないという人も、この形式の三輪車ならば、あるいは乗りこなせるかもしれない。

三輪車なのに止まるとコケる

 まず最初にトリシティがどんな乗り物なのか、少し説明しておく必要があるだろう。パッと見には、普通のスクーターだ。搭載しているエンジンの排気量は125ccで、第二種原付だから自動車専用道路を走ることはできない。最大の特徴は前二輪、後ろ一輪の三輪車であること。しかも前二輪はリンク機構でつながっていて、両輪とも地面につけたままで、車体を左右に傾けられるようになっている。旋回時に通常の二輪車と同じく、車体全体を傾けることができるのだ。

 この機構をヤマハはLMW(リーニング・マルチ・ホイール)と呼んでいる。三輪車であっても、二輪車と同じ感覚で操縦できるというわけだ。自由に傾くから当然なのだが、止まったときは脚で支えないと倒れる。三輪だからといって三輪トラックのように停止時も自立するわけではない。

リンク機構で、前の2輪を傾けることができる
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 こうした機構のため、車体重量は152kg(ABS装着モデルは156kg)と、125ccのスクーターとしては重い。オートバイでいうと250ccクラスの重さがある。一方、エンジン出力は8.1kW(11ps)と控えめだ。そのため、トリシティのカタログデータを見た時は「これで、ちゃんと加速するのだろうか」と少々不安になった。

 インプレッションを語る自分のバイク歴も書いておこう。20歳で原付免許を取得して以来、33年間バイクに乗り続けている。26歳の時に限定解除を突破して大型二輪免許を取得した。現在は1990年に購入したホンダ「AX-1」(250cc)と、1995年購入のスズキ「GSX-1100S KATANA」(1100cc)の2台を所有している。AX-1とは人生の半分近くにあたる26年ものつきあいだし、KATANAは原型が1981年発売だから、35年前の設計である。要するに、かなり古いバイクにずっとなじんできたロートルバイク乗りが、いきなり最新型、しかも三輪という従来と異なる形式のトリシティに乗ったわけである。このような事情を汲んだ上で、次ページ以降を読んでもらえると幸いだ。