※本連載は『Pepperの衝撃!パーソナルロボットが変える社会とビジネス』(日経BP社)から抜粋して再構成したものです。

感情を認識するロボット:クラウドAI

 Pepperには容姿やなめらかな動き、かわいい仕草や流ちょうな会話など、さまざまな特徴がありますが、なかでも最大の特徴は世界初をうたう「感情を認識する」ロボットである点です。では、「感情を認識する」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

 ごく一般的に解釈すれば、相手の感情を理解して空気を読んだ会話をすることです。しかし、人間であってもそれを上手にこなすことは簡単なことではありません。感情をオモテに出さない、顔色1つ変えない人のことを「ロボットみたい」と表現することがあるように、感情がないことが当たり前だと考えられてきたロボットにどうやって相手の感情を理解させるのでしょうか。

 それを実現する仕組みとしてPepperに搭載されているのが「感情認識エンジン」です。ところが人間の感情というのは多種多様なもので、相手によって千差万別、定量化やパターン化が十分にはなされていません。ではどうするか。人間が子どもから成長するにつれて、また生涯それを学び続けるのと同様に経験によって学習していこうというのです。たくさん会話をして、相手が笑ったり怒ったり落ち込んだりするのを認識・分析することで、自分で学習していくのです。これが「自律学習機能」です。

 最初は会話が噛み合わないことが多いかもしれません。私たち、人間の生活の中でも、子どもが会話を理解し始めたとき、または初対面の人と会ったとき、そういう思いを体験すると思います。しかし、会話を続けていくことで、お互いを理解し合うとともに、会話も噛み合うようになっていきます。

 子どもの成長と理屈は同じであっても、従来はコンピューターがそれを実現することは困難であり、満足にできませんでした。なぜそれが可能になるのでしょうか。ここで点と点がつながって一本の線となります。

 ロボットは端末でありインターフェースに過ぎませんが、カメラやマイク、各種センサーを多数装備し、相手や周囲の情報を的確に得ることができます。得た情報はネットワーク上につながったクラウドシステムに適宜、蓄積されていきます。膨大な経験値が日々蓄積され、ビッグデータとなります。それを処理して自律的に学習し、知識につなげるのがディープラーニングです。この一連のシステムが感情認識パーソナルロボットのクラウドロボティクスであり、パーソナルロボットの鍵となっているのです。

 相手によって抑揚の大きさや感情の表現はまちまちです。ヒトとの出会いはいわば無数に存在するため、そのパターン数も無限大と言えるかもしれません。そのため、高度な感情認識システムとして精度(完成度)を上げていくには、できるだけ多くの情報を経験することがポイントの1つになります。しかし、その能力をPepper自体が有する必要はありません。Pepperは学習すべきさまざまな情報の一部を単体で蓄積したり処理することはできますが、多くの情報はインターネットを通じて専用のクラウドシステム(インターネット上のサーバー等)に送ることができます。

 また、1台のPepperの経験を蓄積するよりも、たくさんのPepperの経験を共有した方が解析するデータは増えて精度が上がるでしょう。個人情報を含まない情報については世界中のPepperから集積した数値やパターンをクラウドAIが学んでいくため、その経験は「加速度的に成長していく」としています。

世界中のPepperがネットワークで「クラウドAI」に接続される。膨大なビッグデータを集積し、集合知となって加速度的に成長していく(ソフトバンク発表の資料より)
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『Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス』
(神崎洋治 著、日経BP社、定価1620円[税込み])

世界初の感情認識パーソナルロボットPepperとは――。ロボットビジネスの現状からソフトバンクのビジョン、Pepperの発表から発売までを振り返りながら、Pepperの特徴や仕様、技術、ビジネス等での活用、アプリ開発、AI(人工知能)などについて紹介する。


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