※本連載は『Pepperの衝撃!パーソナルロボットが変える社会とビジネス』(日経BP社)から抜粋して再構成したものです。

2014年6月5日Pepper発表

 2014年6月5日、ソフトバンクモバイルは“世界初”をうたい、人型にデザインされた感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表しました。

 発表会の冒頭、ソフトバンクグループの代表である孫正義氏がステージに登壇し、手に持った赤く光るハートをPepperに手渡しました。Pepperはそのハートを受け取ると自分の胸に装備されたタブレット画面のあたりに押し当てます。ハートはタブレット画面の中に溶け込んでいき、Pepperの身体の中でハートが光を放ち始めました。

 これは人型ロボットにハート(気持ち)を与えた瞬間をイメージしたものですが、感情認識ロボットを製品化するという壮大なプロジェクトのスタートにはピッタリの演出でした。

 孫氏はPepperを「感情を持ったパーソナルロボット」と紹介し、「人類史上初めて、ロボットに心を入れることに挑戦する」と切り出しました。そして、「100年後、200年後、300年後に今日の日を振り返ったとき、あの日が歴史的な1日だったと思うときが来るかもしれない」と続けました。人類にとってPepperの誕生はそれだけ重要な意味を持つことを表した言葉です。

エンターテインメントロボットの誕生
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 孫氏は以前から、労働力不足の解決策の1つとしてロボットが活躍する未来を説いています。ロボット3000万台が人間の労働力で言うと9000万人分に相当する、すなわちロボットは人間の労働力の3倍をこなすと言います。ロボット1台が人間ひとりと同じ労働効率を実現すると仮定しても、ロボットが休みなく24時間働くとすれば、8時間労働の人間と比べれば3倍の労働力となります。数字の是非はともかくとして、前章で解説したように産業用ロボットはさまざまな工場などで既に活躍しています。介護施設での活躍も始まっています。日本国内では少子高齢化のために労働力の減少が心配されており、それに対してロボットの活躍が今後も一層期待されることは間違いありません。

 しかし、Pepperはそのように生産性を高めたり、労働効率の向上のために作られたロボットではありません。ソフトバンクが制作したPepperのホームページにはこんなコピーが載っていました。

 空中飛行もできません。ロケットパンチも出せません。ただ、あなたともっと仲よくなりたいなあ、なんて考えている、人間みたいなロボットです

 このコピーはPepperの実用化の目的を端的に表現していると言えるでしょう。Pepperは重いものを効率的に運ぶために作られた運搬用ロボットではありませんし、細かくて単純な繰り返し作業を正確に行うための産業用ロボットでもありません。もちろん軍事用に開発されたロボット兵器でもありません。Pepperは人と会話したり、ダンスや歌などのエンターテインメントを通じて、相手や周りの人たちを笑顔にさせるために作られたコミュニケーションロボットであり、コミュニケーションによって人の生活を支援するパーソナルアシスタントロボットなのです。


『Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス』
(神崎洋治 著、日経BP社、定価1620円[税込み])

世界初の感情認識パーソナルロボットPepperとは――。ロボットビジネスの現状からソフトバンクのビジョン、Pepperの発表から発売までを振り返りながら、Pepperの特徴や仕様、技術、ビジネス等での活用、アプリ開発、AI(人工知能)などについて紹介する。


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