通信速度が下がる原因は……

 とは言え、「スピードテストの結果では、MVNOの実力は測れない」という答えでは、何だか欲求不満になりそうだ。MVNOのネットワーク性能やユーザー体験の高さを決めるファクターについて、もう少し詳しく見ていこう。

 MVNOがユーザー体験に影響する「ネットワーク性能」を提供する中で、ボトルネックになる1つの大きな要素が、MNOとMVNOが相互接続している帯域幅だ。この帯域幅が狭ければ同時にデータ通信できるトラフィックが少なくなり、利用者にとって使い勝手が悪いサービスになりかねない。逆に余裕を持った帯域幅の設定があれば、トラフィックへの耐性が高くなってスムーズな通信ができる。

「MNOとMVNOの接続部分は、MVNOの性能を考えたときにクリティカルなボトルネックになる。トラフィックに対して帯域が狭いと、送れないパケットが出てきてしまって、情報が歯抜けになってしまう。すると再送要求が起こって、再送によって全部のパケットがそろった時点でWebページがレンダリングされたり動画の再生やゲームのプレイが始まったりする。再送が繰り返されると、結果として通信速度が低下し、通信品質が劣化する」(IIJの佐々木氏)。どのぐらいパケットを捨てずに送れるか、帯域の設定がMVNOの腕の見せどころになるわけだ。

MVNOも帯域幅を広げて「増速」を図る

 もちろん帯域幅を広げてリッチな接続をすればいいのだが、話はそう簡単には進まない。MNOとの接続は、帯域幅に応じた接続料金がかかるからだ。広い帯域を用意すればユーザー体験は良くなるが、コストがかさむ。料金を高く設定する必要が生じ、利用者がつかないようだとビジネスが成立しなくなる。

 逆に帯域を絞り込んで契約すれば、低料金でサービスを提供でき、MVNOにとって黒字化の可能性が高まる。しかし、帯域幅の設定によっては、ピーク時はもとより、ピーク時以外でも利用者のトラフィックに対して帯域が不足して通信速度が低下するリスクも高まる。良いユーザー体験を提供できないサービスは、いずれユーザーが離れていって事業の継続ができなくなるだろう。

 MNOの接続帯域幅をどのように設定するかは、MVNO各社のポリシーにかかわる部分であり、経営上の秘密に属する。NTTドコモやKDDIといったMNOとの接続帯域幅を公表しているMVNOはない。日本通信の福田氏も「帯域幅の設計は、MVNOがどのような最適解を持っているか、何を最適としてどのようなサービスを目指すかに依存する」という。

 スピードテストが必ずしもMVNOの「性能」を示す指標とならないとしても、スピードテストや実際に利用したユーザー体感の通信速度が遅いと感じられることが多いMVNOでは、MNOと接続する帯域幅を倹約している可能性はある。ただ、これも恒常的なものかどうかは判断が難しい。MVNOではトラフィックの予測を基にして帯域幅の増強を適宜実施している。次に試したときは快適に通信できる状態に「増速」されていることも十分ありうるのだ。