カンガルーの肉は超ヘルシー?

編: 確かに肉は、最近熟成肉だのジビエだの、いろんなブームが次々と生まれて、目が離せないジャンルになっていますよね。肉マイスターの田辺さんが今注目しているトレンドは?

 僕のことをいうと、実は今カンガルーに首ったけなんですよ。脂分は鶏のささみより少なくて、しかもやわらかい。脂肪を分解したり、燃えやすくしたりする「共役リノール酸」という成分も、食用動物の中では一番多いとされています。最初は知り合いのアスリートに「すごい肉があるから食べてみて」と言われてもらったんですが、鹿肉に近い味わいで、ローストとか、たたきにしてみたら、これがクセがなくておいしい。オーストラリアでカンガルーは、皮をサッカーのスパイクにするだけで、肉は家畜の餌にしていたそうなんです。ところが現地の著名シェフがジビエのひとつとして紹介してブームに。日本ではまだ提供しているレストランも少ないのですが、バセルなどのネットショップで、冷凍モノを入手することができます。とにかくヘルシーでおいしいから、これは人気になる予感がありますね。

編: 肉の世界もブームを牽引するのは健康志向ですか。

 熟成肉がブームになったのも、そもそもは体にやさしい赤身肉が人気になり、熟成すると赤身をおいしく食べられるからというのがありましたよね。その延長でカンガルーのような肉が「トクホ肉」とか、「機能性肉」などと呼ばれて、サプリメント代わりに肉を楽しむようになる日も近いんじゃないかな。そうなると、脂身の少ないヘルシーな肉ならなんでもオッケーというわけにはいかなくて、牛肉なら牛、鶏肉なら鶏それぞれの個体としての健康も重要になってきますよね。不健康に太らせたような肉は、どんなに脂が乗っていてもやっぱり不自然だし、反対に自然に逆らわずに生きてきた野生の肉は荒削りでも口にしたときの感動がある。

編: ジビエのブームも、その感動が支えているのかもしれませんね。

 そういえば最近、牛肉の世界でもこの「牛の健康」志向の流れがありまして。お産したことのある牛、つまり経産牛が人気になりつつあるんですよ。若い処女牛がうまいと思われているのは、実は日本だけの話で、フランスなんかだと処女牛より経産牛のほうが味ののりがいいと言われ、高価な場合も多いんです。日本の牛にもおいしい経産牛がいるはずだと、研究するシェフも増えてきましたよね。日本は、牛も含めて何でも若いほうがいいと思われがち。でも子どもを産んでなお、元気に生きているということは、それだけで健康な牛ということなんですよ。やはり牛も若さより、健康ですよ。