米国で流行し始めた抗アレルギーダイエットに疑問!

 ところで、最近、別のタイプのアレルギーが、議論されています。IgG(免疫グロブリンG)という抗体が関与する、「遅延型」と呼ばれるアレルギーです。

 遅延型は、食物を(特に同じ食べ物をひんぱんに)摂取したあとにゆっくりと体に起こる炎症が、原因の1つという説が主張されています。そのため数時間から数日後に症状が発症します。肥満、疲労、頭痛、花粉症、喘息、関節痛、胸焼け、膨満感、下痢、不眠、注意欠陥多動性障害、アトピー性皮膚炎、にきびなどさまざまな慢性的な症状に関与すると主張されています。

 その診断法として、「遅延型フードアレルギー(IgG)検査」と呼ばれる、食べ物の抗原特異的IgG抗体を測定する血液検査があります。ところが、専門家の間で、IgG抗体を用いた食物アレルギー検査の有用性が、疑問視されているのです。

 さらに最近米国では、遅延型のアレルギーによる炎症が肥満の原因という理由で、メディアでも大きく取り上げられたことで、減量対策として「抗アレルギーダイエット、アレルギー食品の除去ダイエット」が流行しています。さまざまな情報で、国民が混乱する中、欧米諸国の専門家の学会が、以下の声明を発信しています。

【1】欧州アレルギー臨床免疫学会議(EAACI)



 食品に特異的なIgG4(IgG4は、IgGのサブクラスの1つ)を用いた検査で、何百もの食品の大規模なスクリーニングが行われますが、診断的価値において、科学的根拠が欠如しています。多くの結果が、臨床症状に関係なくても、陽性を示します。この検査により、多くの患者さんが、確定診断なしに、病気の症状が、食物摂取に関係していると信じてしまいます。

 結論として、IgG4検査は、食物アレルギーや食物不耐症に無関係であると考えられます。この反応は、むしろ私たちが繰り返し食品成分にさらされると、免疫系による外来タンパク質として認識される生理学的な応答です。食品に関連する患者からの訴えに対する診断として、使用すべきではありません



 

【2】アレルギーぜん息&免疫学アメリカンアカデミー(AAAAI)



 EAACIの声明を支持します。

 食品に対するIgG4検査が世界中で普及しています。この検査は、疑いのあるアレルギー症状のために、簡単に検査ができますが、結果の解釈が難しいことが問題です。臨床的な証拠がないのに、診断を行うため不適切に使用すると、患者さんのケアや生活の質の低下につながる可能性があります。



【3】カナダアレルギー臨床免疫学会(CSACI)



 EAACIとAAAAIの声明を支持します。

 CSACIは、食品感度、食物不耐症や食物アレルギーを識別するための簡単な手段として、過去数年間にわたり、一般市民に向けのIgG検査の市場拡大について大きく懸念しています。過去には、代替ないし補完医療を実践する医療機関にサービスを通じて、広く提供されましたが、今では全国チェーンの薬局を通じて、消費者に直接販売されています。



IgG検査の根拠となる研究はない

 IgG検査を、食物に対する有害な反応の診断、将来の副作用の予測のために使用するための根拠となる研究はありません。文献では、食品に特異的なIgGは、食品にさらされたり、食品に耐性をもつことのマーカーであることが示唆されています。ですので、食物特異的IgG検査の結果は、健康な成人および子どもでも陽性となる可能性があります。このテストの不適切な使用は、誤った診断の可能性が増大し、 不要な食事制限が生じ、生活の質が低下します。

 現状では、「遅延型フードアレルギー検査の結果で、食物アレルギーの診断は、必要のない食事制限を招き、かえって子どもの成長不良、栄養失調のリスクになる」ことが懸念されています。

 食物アレルギーの原因となる食品の同定、食事療法のアドバイスには、専門医の診断が必須ですね。

Photo:SOMMAI
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著者

大西睦子(おおにし・むつこ)

大西睦子

医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。