この記事は「日経おとなのOFF」2014年7月号(2014年6月6日発売)から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 歯を失う原因の7割は虫歯と歯周病といわれる。長年、「削らない、抜かない歯の治療」に取り組んできたサイトウ歯科院長の齋藤博さんは、「虫歯も歯周病も食生活や歯磨きなどの生活習慣と密接に関わりを持つ、いわば生活習慣病です。逆にいえば、その生活習慣を改善することで、歯を失うリスクは大幅に軽減されます」と強調する。

 自分の歯を残すために齋藤さんがまず提唱するのは、「歯の接触時間を減らす」こと。そこでチェックすべき習慣が「TCH(上下歯列接触癖)」だ。聞き慣れない言葉だが、上下の歯を無意識に接触させる癖のこと。顎関節症の原因を探る研究から、患者の多くが持つこの癖が、口こう腔くう内の健康にも悪影響を及ぼしていることが分かってきた。

歯が接触していると、口を動かす筋肉(咬こう筋きんや側頭筋、内ない側そく翼よく突とつ筋きん)が収縮し続け、歯に過大な負担がかかる。その結果、歯が折れたり義歯やインプラントが壊れやすくなったりと口腔内にも悪影響を及ぼす。1日に数時間も上下の歯が触れるような重度のTCHがあると、ダメージは深刻だ
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 TCHは顎関節症患者特有のものではなく、誰もが持ち得る、いわば口の余計な緊張癖。「そういうと強く噛み締めた状態を想像するかもしれませんが、短時間の噛み締めには、実はそれほど害はありません。問題なのは、軽くても長時間歯が触れ合っている状態。無意識に長く続けてしまうので、さまざまな障害を引き起こす要因になります」と、顎関節症治療の第一人者、東京医科歯科大学准教授の木野孔司さんは解説する。

 上下の歯が絶えず接触していると、歯に横揺れを与えるために歯を消耗させ、また歯周病を悪化させる原因にもなる。

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