ウンチの移植で難病が改善!

 最近、腸内細菌叢に大きな問題がある難病患者に対して、「他人の腸内細菌」を丸ごと移植するという画期的治療法も出てきた。話題の“ウンチ移植”(便微生物移植)だ!

 移植するのは健康な人のウンチ100g。食べ物のカスなども含まれるが、ウンチはほとんど細菌の固まりと言っていい。「乳酸菌飲料1本に入っている乳酸菌は10億個程度だが、人の糞便100gにはその1万倍、10兆個の菌が含まれている」と金井教授。このウンチ100gを生理食塩水に溶かし、フィルターでこした液体をダイレクトに患者の大腸に注入するという。

 難治性のクロストリジウム・ディフィシル腸炎※に悩む患者42人を3グループに分け、従来の抗生物質との効果の違いを見た。薬を使った患者の23~31%が改善したのに対し、ウンチ移植を1回したときの改善率は81%。2回の移植によって、改善率はなんと94%に達した(N Engl J Med.2013 Jan 31;368(5):407-15)。ウンチ、すごいです!

 2014年3月から、慶應義塾大学病院でも臨床試験が始まった。潰瘍性大腸炎患者10人、腸管ベーチェット病患者10人、機能性胃腸症患者15人の計45人が対象になっている。ちなみにドナー(ウンチの提供者)は「配偶者か2親等内」の近しい家族。本来なら生活環境がまったく違う相手のほうが効果を期待できるのだが、「他人のものはイヤ」という患者が多かったらしい。なるほど、そりゃそうでしょう……。

 ウンチ移植ほどダイナミックな効果は期待できないまでも、生活環境を変えれば腸内細菌叢も変わってくる。

 腸内細菌叢のバランスを崩す大きな原因は食生活だ。「特に高脂肪食や食物繊維不足がいけない。また、ストレスや運動不足でディスバイオシス(腸内細菌叢のバランスが乱れた状態)が起こる可能性もある」と金井教授は指摘する。たらふく肉を食べた翌日にオナラが臭いのは悪玉菌が増えたため。暴飲暴食を避け、食物繊維の豊富な野菜を積極的に食べよう。ヨーグルト、納豆、漬け物といった発酵食品も腸内細菌叢を整えてくれる。

 規則正しいリズムや運動習慣など、体に優しい生活は腸内の善玉菌にも優しい生活。健康的な生活でディスバイオシスを防いでほしい。

※クロストリジウム・ディフィシル腸炎
抗生物質の服用により、クロストリジウム・ディフィシルという菌が異常に増えて、大腸で感染、炎症がみられる症状。「偽膜性大腸炎(ぎまくせいだいちょうえん)」とも呼ばれる。抗生物質を服用していて、または、飲み終わって数日経った後で、「1日2~3回(いつもより回数が多い)のやわらかい便」、「頻ぱんに下痢がおきる」、「粘性のある便」、「お腹が張る」、「腹痛」、「発熱」、「吐き気」などが多くの症例で認められる。 気づかずに放置すると重症化する場合がある。

 今回、教えていただいたのは、
 慶應義塾大学医学部消化器内科の金井隆典教授

 1988年、慶應義塾大学医学部卒業。同大医学部助手、清水市立総合病院内科医長を経て、95年に米ハーバード大学に留学。2004年に東京医科歯科大学医学部講師、08年に慶應義塾大学医学部准教授に就任。13年より現職。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器学会消化器病専門医。共著書に『クローン病―新しい診断と治療』(診断と治療社)など。

(文/伊藤和弘、イラスト/うぬまいちろう)