近年、肌のトラブルを訴える人が増加。「体質だし、乾燥肌だから仕方ない」とあきらめてしまう人も多い中、肌のトラブル、実は「体質ではなく姿勢にある」と、新たに「アトピー発症機序理論」を提唱するようになった、ナビタスクリニック川崎の皮膚科専門医、山本綾子先生(日本皮膚科学会専門医)が、さまざまな皮膚病・肌トラブルについて解説する連載。
 前回に続き、今回は蕁麻疹(じんましん)の治療法を、アトピー発症機序理論に当てはめて考えていきます。

 前回、発症してからの期間が1カ月以上の慢性蕁麻疹について、特に「はっきりとした原因が不明」なのに、1カ月以上続く慢性蕁麻疹について、一般的な治療法や、治りにくい人の特徴の1つである体温の低さの理由について解説しました。

 今回は、ストレスと蕁麻疹の関係、そして治りにくい人のもう1つの特徴である「お腹の谷折り線」ができる姿勢とストレスの関係を見ながら、アトピー発症機序理論を応用して、「治りの悪い慢性蕁麻疹」、そして皮膚のトラブルを解決するヒントを説明していきます。

ストレスがかかるとなぜ皮膚の血流が悪くなる?

 「ストレスがかかると蕁麻疹が出やすい」。こんなことを経験上、感じている方も多いのではないでしょうか?

 ストレスがかかると問題になるのが「自律神経の乱れ」です。

 神経には、脳(大脳、脳幹、小脳)と脊髄で構成される「中枢神経系」と、中枢神経から枝のように全身に張り巡らされている「末梢神経系」があります。末梢神経系は、意思によって体の各部位を動かす「体性神経」と、意思に関係なく刺激に反応して内臓の機能を調節する「自律神経」に分けられます。

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 例えば、睡眠中で体が動いていなくても、心臓は止まりませんし、呼吸も止まりません。これは自分の意思とは関係なく、内臓機能を調節する自律神経が心臓を動かし、呼吸をうながすからです。

 自律神経系は、互いに正反対の作用をする交感神経系と副交感神経系で構成されます。ほとんどの器官(内臓)は、交感神経と副交感神経の両方が同時に働くことにより、調節・維持されています。

 副交感神経は、個々の内臓の機能を活性化させ、身体を養う方向に働きます。対して交感神経は、内臓機能を抑制して体を緊張あるいは興奮状態にするよう働き、周囲の状況に対して即座に対応できるように、運動器系の機能を向上させるように作用します。この交感神経・副交感神経が互いにバランスを保つことで、身体は健康な状態を維持しています。

 つまり重要なのは「バランス」です。よく、交感神経は運動状態で作用し、副交感神経は休息状態で作用すると表現されますが、だからといって、「カラダを休息させる副交感神経が作用する状態のほうが、交感神経が強く作用する状態より良い」ということではないのです。どちらの機能も、生きていくために必要不可欠で、2つのバランスを保つことが大切です。

 ここで冒頭の話に戻りますが、ストレスがかかるとなぜ自律神経が乱れるのか。これは、交感神経が活性化しやすくなり、それが血流にもダイレクトに関係するからです。

図1:前毛細血管括約筋
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 血管は心臓から大動脈として出発し、末梢に向かうにつれて次第に細くなり、中動脈、小動脈、細動脈と広がって、最も細い毛細血管になります。ところがこの細動脈から毛細血管へと分岐する部位で輪状に取り巻く筋肉である「前毛細血管括約筋(ぜんもうさいけっかんかつやくきん)」がぎゅっとしまると、毛細血管に流入する血液が減少します。

 この毛細血管への血流量を決定する「前毛細血管括約筋」をしめるのが、実は交感神経なのです。皮膚には真皮乳頭(しんぴにゅうとう)と呼ばれる毛細血管の発達した部分がありますが、ストレスがかかり、交感神経により前毛細血管括約筋が収縮すると、皮膚の毛細血管への血流も低下、つまり、皮膚の血流が悪くなります。となると、蕁麻疹ができやすくなるわけです。




図2:皮膚構造(出典:Wikimedia Commons)
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