ビジネスパーソンが注意するべき“病気”について、専門家に解説してもらう連載。今回は古代人の歯石から分かった歯周病について、つだぬまオリーブ歯科クリニック 院長石川 聡 先生に解説してもらいます。

 ビジネスパーソンは歯が命。かかりつけ医から定期検診の案内が届いたり、口腔内の健康維持のため歯科医院でクリーニングを受けている人もいることでしょう。

 歯の周りのクリーニングでは、石灰化(ミネラル成分が沈着し硬くなる)歯垢、つまり歯石を取り除きます。終わると歯がツルツルで気持ちが良いものですよね。

 今回はその歯石について、英国の国際学術誌「Nature Genetics」に掲載された「古代人の歯石を詳細に解析したらいろんなことが分かった」という最新の学術的研究について、解説していきます。

歯石の分析で分かること

 2014年2月、「Nature Genetics」誌に「Pathogens and host immunity in the ancient human oral cavity」という論文が掲載されました。この論文では、遺跡に眠る古代人の歯石に、彼らが生きていた時代の情報が封じ込められていることが報告されました。研究グループは最先端の分子生物学的手法を用い、古代人の歯石を分析したのです。

 分析の具体的な内容は、中石器時代(7550-5450年前)、新石器時代(7400-4000年前)、青銅器時代(4200-3000年前)、中世(1100-400年前)、つまり、人類が狩猟により暮らしていた時代から、耕作を始めた時代までのホモサピエンス(人類)の歯石を採取解析し、現代人の歯石と比較するというものでした。

 数千年前の人類がどのような食生活をしていたのか見当もつきませんが、遺跡や貝塚からの出土品から推測するという考古学的手法とは異なり、彼ら自身の口腔内に存在していたサンプルを解析することは、太古の人類の生活や行動を解き明かす直接的なデータが得られるので、より核心に近づくことができると考えられます。

 では、いったいどのようなことが分かったのでしょうか?

1. 人類を悩ます歯周病菌は太古から存在していた

 数千年の時間の隔たりと異なる食生活にもかかわらず、現代の我々を悩ます歯周病の原因である同じ細菌が古代人の口の中にもいました。歯周病の原因菌は、約1万年以上も特に変化することなく、人類とともに生きながらえてきたのです。

 つまり歯周病の原因菌は、人類の歴史とともに親から子へ、あるいはパートナーへと脈々と受け継がれてきたといえます。

出典:G. Richard Scotta et al. Stable carbon and nitrogen isotopes of human dental calculus: a potentially new non-destructive proxy for paleodietary analysis. Journal of Archaeological Science. 39-5, May 2012, 1388–1393
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