近年、肌のトラブルを訴える人が増加。「体質だし、乾燥肌だから仕方ない」とあきらめてしまう人も多い中、肌のトラブル、実は「体質ではなく姿勢にある」と、新たに「アトピー発症機序理論」を提唱するようになった、ナビタスクリニック川崎の皮膚科専門医、山本綾子先生(日本皮膚科学会専門医)が、さまざまな皮膚病・肌トラブルについて解説する連載。
 7回目はアトピー発症機序理論を、実例を挙げながらこれまでの連載を振り返り、解説していきます。

 この連載の第2回で「筋肉はポンプ機能を担う」(関連記事)という話、第3回で「筋肉は本来あるべき位置からずれていると負担がかかり、硬くなって、血流が悪くなり、その筋肉の部位がカサカサしたり、湿疹が出たりする」という話をしてきました(関連記事

 第7回となる今回は、「湿疹の形」と「筋肉の形」が驚くほど一致するという実例を挙げながら、アトピー発症機序理論を解説していきたいと思います。

首が肩より前に出ていると?

写真1
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 写真1の首の左右端の赤い湿疹。まるで湿布にかぶれたかのように、境界がくっきりとしていますね。もちろん、この方は湿布を使っていたわけではありません。

 別の方の例を見てみましょう。

写真2
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 写真2の方の場合、湿疹の範囲は写真1の方より広いものの、やはり湿布にかぶれたかのように境界がはっきりとしています。

写真3
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 さらに湿疹の範囲が広くなってきましたが、写真3もまた境界が明瞭ですね。

 いずれもまるで筆で描いたかのように、境界がはっきりしています。こうした湿疹を見ていると、何か法則がありそうに思えてきませんか?

図1
出典:Wikimedia Commons
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 図1は「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」という筋肉の範囲を示しています。この部位は、写真1と同じですね。

図2
出典:Wikimedia Commons
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 図2は「僧帽筋(そうぼうきん)」という筋肉を示しています。僧帽筋は肩こりに関係しているとも言われますし、ご存知の方も多いでしょう。非常に広い筋肉で、上部線維・中部線維・下部線維に分けられますが、上部線維は後頭部から肩甲骨の肩峰(けんぽう)と呼ばれる肩の端まで走っています。写真2の範囲は、ちょうどこの上部線維に一致する部位に見えます。また、写真3は、僧帽筋の範囲を縮小したかのように見えるでしょう。

 では写真1~3枚と図1、2を照らし合わせて分かることはなにか?

 それは、写真4のように首の位置が、肩に対して正しい位置になかった、つまり肩よりも首が前に出ていたために、成人で約5kgあると言われる頭の重みを、細い首や首の根もとだけで無理矢理支え続け、筋肉に非常に負担がかかっているということです。以前にも書きましたが、こうした姿勢の人の首のうしろには、深いシワがあり、折れ曲っているのが分かると思います。無理な力がかかっていなければ、皮膚に深いシワはできません。

写真4
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湿疹の出ている部位=筋肉に負担がかかっている部位

 多くの症例に接する内に、湿疹の部位を見るだけで、その患者さんが普段どのような姿勢をしているのかさえ一瞬で分かるようになるほど、姿勢と湿疹の位置は関係していると言えます。

 「湿疹の出ている部位=筋肉に負担がかかっている部位」であり、筋肉に負担がかかるのは、本来あるべき位置からずれているからです(関連記事)。

 実際に、ここまで写真で見てきた湿疹の患者さんたちは、ひどい肩こりを訴えていました。それが、ステロイド外用薬とともに、頭の位置に注意してもらい、ストレッチなどの運動療法を併せて開始すると、湿疹は再発しなくなっただけでなく、ひどい肩こりも治りました。

 次の写真はどうでしょう?

写真5
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 同じように首に境界のはっきりした湿疹がありますが、さきほどの写真1~3のケースとは違い、前のほうに湿疹が出ています。またじっくり見ると、首の前側に深い「谷折り線」があるのが分かります(連載第5回参照)。

 つまり写真5のような首の前側の谷折り線は、首の位置がずれているのは写真1~3のケースと同様ながら、より首の前を潰すような姿勢を多くしていたことを示します。