近年、肌のトラブルを訴える人は増えている。乾燥が目立つ冬や、花粉症のシーズンは皮膚科を訪れる人が増える一方で、「体質だし、乾燥肌だから仕方ない」とあきらめてしまう人も多い。こうした肌のトラブル、実は「体質ではなく姿勢にある」と、新たに「アトピー発症機序理論」を提唱するようになった、ナビタスクリニック川崎の皮膚科専門医、山本綾子先生(日本皮膚科学会専門医)が、さまざまな皮膚病・肌トラブルについて解説する連載。
 5回目は、頭や顔に発症する、脂漏性皮膚炎についての後編。悩みの種になることも多い、顔に現れる湿疹について、見ていきます。

顔の湿疹の原因は?

 前回頭の脂漏(しろう)性皮膚炎、頭の湿疹は、首の後ろがつぶれているのが原因と解説しました。今回は、患者さんの悩みの種になりやすい、顔の脂漏性皮膚炎や湿疹について考えていきましょう。

 脂漏性皮膚炎は頭皮だけでなく、顔にも生じます。顔の脂漏性皮膚炎がひどい人や顔の湿疹を繰り返す人は、「首の谷折り線」が首の前にあります。首の前のシワが異常に目立つ人やあご下から首との境目にざらつきがある人は、この「首の前の谷折り線タイプ」であるといえます。

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 ちなみにこの首の前の谷折り線タイプ、スマートフォンやタブレット端末が普及してから、増加傾向にあるようです。電車でスマートフォンなどの画面を見ている人々の姿勢を観察してみると、画面を胸の下のほうに置いている人と、顔の高さ近くまで持ち上げている人の2種類がいます。首の前の谷折り線ができてしまうのは、視線を下に向けすぎている前者のタイプです。顎が胸にくっついてしまうほど、首の前に隙間がなくなっているのですね。首をそれほど深く折り曲げているわけですから、その部分がうっ血しても不思議ではありません。

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 まるで首を絞められたかのように深いシワ。年齢によるものだと思うかもしれませんが、幼児でも顔の湿疹がひどい場合は、深いシワが首の前にあるということがよくあります。幼児が親より深いシワ……となると、さすがに年齢のせいとは言えないですよね。

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 前回、解説しましたが、首だけをぐっと前に曲げて顎を胸につけるように下を向くことは、首の本来のカーブ(前にゆるやかに凸)と逆で、非常に身体に負担がかかる姿勢です。首の筋肉は正常の位置からずれることにより硬くなり、首の血管をつぶしてしまいます。

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頭部の静脈(Wikimedia Commonsより)
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 血液は心臓から送り出され、静脈を通って心臓へ戻ってきます。四肢の静脈は逆流を防ぐために、弁が発達していますが、頭部の静脈には弁がありません。これは頭は心臓より上にあり、重力に従って逆流することなく心臓へ血液が戻りやすいからだと考えられます。しかし「谷折り線=深いシワ」として認められるほどに、ぐっと無理に首を曲げてしまうと、血液が心臓に向かってスムーズに戻れなくなり、溜まってしまうのですね。

 顔の脂漏性皮膚炎も、頭の脂漏性皮膚炎と同様に、症状がひどい場合は、お腹の谷折り線がしっかりとあります。お腹が潰され、腸管でのビタミンB2、B6産生が不足して、皮膚がオイリーになるのは、顔も頭も同じ仕組みなのです。