今回お話を聞いたのは、政財界の要人や文化人が集うサロン「アークヒルズクラブ」の専務理事を務める紿田(たいだ)英哉さん。

 最初にお会いしたのはランチの場で、ある方に紹介されたとき。濃紺のジャケットにチャコールグレーのスラックス、さりげない上質さがひと目で伝わる。総合商社の丸紅で専務まで上り詰めたと聞いていたのでアクの強い方をイメージしていたが、見事に裏切られた。やわらかい笑顔を浮かべ、ゆったり話を紡いでいく。話しているうちにこちらが自然と心が開いてしまう、稀有な才を持っている方と感じた。

 アークヒルズクラブの存在は知っていた。知性と教養を備え、社会的評価を受けた人たちが集う場――私ごときが敷居を跨ぐことは一生ないだろうと思っていた。紿田さんは森ビルの故・森稔元会長に請われ、2008年に専務理事に。このサロンの“主(あるじ)”となった。

 サロンは場がどんなにゴージャスであっても、あるいはメンバーにセレブリティが名を連ねていても、それだけでは本来の役割を果たさない。人と人のつながりが深まったり広がったり、いきいきとした社交が行われていくところに、真の価値は生まれる。だからこそ、主の果たす役割は大きい。集まってくる人のカラーは主の佇まいで決まってくるし、そこで魅力的なつながりが生まれるかどうかは、主の力量にかかっている。

 「人と人のつながりを作ること、そこから何かが生まれていくことが何よりうれしい」と紿田さんは軽やかに語る。今回はお話のなかから“人と人の魅力的なつながりを生み出す方法”を学べればと思う。

 さらに興味深かったのは、大学教育の常識を覆す試みで注目されている国際教養大学(秋田市)ができるまでのお話。実は紿田さんはこの大学の創設に深くかかわった人物なのだ。

紿田英哉氏は1938年生まれ。1961年東京大学教養学部教養学科卒業後、丸紅入社。2度にわたり合計10年ロンドン駐在、専務取締役、丸紅経済研究所会長を経て、2002年1月~2007年6月、国際交流基金理事・日米センター所長。2004年から国際教養大学設立に関わり、理事・特任教授を歴任。また幼児教育で名高いスズキメソッドの国際スズキ協会(International Suzuki Association)の理事長として、2013年には発祥の地・松本市で36カ国から5300人を集めた世界大会を成功させた。現在、アークヒルズクラブ専務理事 ECCO Japan会長、国際教養大学理事のほか、桐朋学園理事、国際経済交流財団理事も兼ねる。2002年、英国エリザベス二世女王陛下より名誉大英勲章「CBE」を叙勲。2010年には外務大臣表彰を受ける。(写真/稲垣純也)
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