今回のテーマ:早期警戒衛星。宇宙空間からミサイルの発射を監視するための衛星。広い範囲を見下ろすことができる衛星により、発射された直後に探知できれば、早い段階で警報を出し、迎撃ミサイルなどで迎撃できる可能性が高まるという。

 政府は2014年度予算で、「早期警戒衛星」の実用化に不可欠の宇宙用赤外線センサーの開発を開始する方針を固めた。初年度の予算として宇宙航空研究開発機構(JAXA)に4800万円を計上した。

 では、早期警戒衛星とはどんなものだろうか。

 早期警戒衛星というのは、ミサイルの発射を宇宙空間から監視する衛星だ。ミサイルは発射時の噴射により赤外線を放出する。それを宇宙から赤外線センサーで探知し、発射の時点で「ミサイルが来るぞ」と警報を出す役割を持つ。このような発射の段階でミサイルを捕捉するシステムは、飛んでくるミサイルを途中で迎撃するミサイル防衛構想(MD)には必須だ。

 米国は、1970年代から「DSP(Defense Support Program)」という早期警戒衛星網を赤道上空3万6000kmの静止軌道に展開している。DSPは冷戦時の報復核攻撃のための衛星システムだったが、現在はMDに特化した次世代の早期警戒衛星システム「SBIRS(Space-Based Infrared System)」を構築中。すでに7機のSBIRS衛星が打ち上げられている。

SBIRS(Space-Based Infrared System)衛星のイメージ(Lockheed Martin)

 早期警戒衛星システムには、「絶対にエラーを出してはいけない」という厳しい要求が課せられる。なにか別の現象をミサイル発射と誤認して見当違いの対応をしてしまうと、それだけで国際関係が緊張し、最悪の場合には偶発戦争勃発ということも考えられるからだ。

 このため、センサーや検出ソフトウエアには、ミサイル発射以外の赤外線を発する現象を除外する能力を可能な限り持たせる必要がある。2つ、あるいはそれ以上の波長の赤外線で監視して、すべての波長でミサイルの特徴を持った対象だけをふるい分ける仕組みや、地上から宇宙に至る空間で赤外線を発するさまざまな現象が、センサーにはどのように映るのかを調べあげた“カタログ”が必須だ。

 特に、赤外線を出す現象の把握は重要だ。山火事、雷、大気の発光、噴火、地球の大気圏に突入する小天体、航空機や船舶、早期警戒衛星よりも低い軌道を巡る衛星の小型ロケットエンジン噴射など、赤外線を発する現象は非常に多岐にわたる。こうした赤外線源について、カタログを作っておいて、センサーが検出した赤外線と比較し、ミサイルが発射されたかどうかを判断するわけだ。

 1960年代、米国はガンマ線で核爆発を検知する衛星「ヴェラ」を12機も打ち上げた。核爆弾の爆発で発生する、ごく短時間の強力なガンマ線を検出する装置を積んでいた。ところが、ヴェラは核実験が行われていないときも、核実験と類似した特徴を持つガンマ線を検知した。現在、それは遠い宇宙で発生しているガンマ線バーストという天体現象であることが分かっている。核実験を検知するはずが、未知の天体現象を発見してしまったのだ。