今回のテーマ:放射能とは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線を出す物質の性質のことだ。放射線を出す性質を持っている物質が、放射性物質。この放射性物質を除去できる微生物は存在しえるのだろうか?

 東日本大震災に伴う東京電力・福島第一原子力発電所の事故が起きてから、早くも3年近くが経とうとしている。1号機のカバーは完成し、4号機燃料プール内の使用済み核燃料の取り出しは始まったが、今なお先が見えない印象だ。ストロンチウム90を含む高濃度の汚染が地下水から検出されてもいる。忘れてしまっても構わないと言える状況では決してない。

 その一方で、今になっても被災地を中心に怪しい対放射能グッズを売り込む動きが後を絶たないようだ。今回はそのうちの一つ、「放射能を消すことができる有用微生物」を取り上げてみよう。

 結論を先に書くと、微生物で放射性物質を消滅させることはできない。もしできたら、それはノーベル賞もののとてつもない大発見であり、その微生物を応用すれば現在の原子力発電所よりも遙かに安全で強力な発電所だって造ることができるはずなのだ。そうせずに、単に「放射性セシウムを消去することができる」という売り文句で、微生物を売っていたら、それはまず間違いなく詐欺である。

おなじみの大腸菌(Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH)

 さて、まずは高校で習う化学のおさらい。物質が燃えるということは酸素と結びつくことだ。ここで、物質の代表として一番軽い水素を選び、酸素と結合したとき、どれぐらいエネルギーが出るか考えてみよう。原子1個の反応で出るエネルギーはとても小さいので、こういうときはたくさんの原子を集めて一固まりにして考える。化学では1mol(モル)という単位をよく使う。1molはだいたい6×10の23乗個のこと。6の後ろに0が23個も続く巨大な数だ。この数字は別名アボガドロ定数という。

 ちなみに、水素ガスは2つの水素原子が結合して分子になっている。アボガドロ数個の水素原子を集めると、2gになる。一方、原子力発電所の燃料であるウラン235という物質の原子を、アボガドロ数個集めると、235gになる。共に含まれる原子の数は同じ。それぞれ、水素分子が1mol、ウラン235原子が1molということになる。

 ここでびっくりの事実。水素ガス1molを燃やすと、出てくるエネルギーは286キロジュールとなる。ジュールというエネルギーの単位がぴんとこない人向けに言い換えると、15℃の水800ccを沸騰ぎりぎりの100℃まで過熱できるエネルギーに相当する。エネルギー効率100%を仮定すれば、家庭用のヤカンでお湯を沸かすには、2gの水素ガスを燃やせばいいわけだ。

 では、1molのウラン235が核分裂反応を起こすと、どれだけのエネルギーが出るか。実に19.3テラジュールものエネルギーが発生する。これは水素ガスの6700万倍だ。同じ個数の原子から、核分裂反応では燃焼の1000万倍以上のエネルギーが発生するのである。