今回取り上げるテーマ:ロケットの燃料。飛び上がる仕組みの違いでロケットを大きく2つに分けると、燃料が固体か液体かということになる。例えば、H-IIロケットは真ん中部分が液体燃料方式で、周囲についているブースターが固体燃料方式。

 2013年、日本の宇宙開発最大の話題は、9月に成功した新型ロケット「イプシロン」の初打ち上げだった。ところで、イプシロンの特徴は全段固体ということだが、そもそも“固体”とはどういうことだろうか。もう一種類液体ロケットというのもあるが、固体と液体とでは何が違うのだろうか。そして、イプシロン初打ち上げの時、「この技術はミサイルにも使える」という報道があったが、そもそもロケットとミサイルの違いはどこにあるのだろうか。

全段個体ロケットであるイプシロンのイメージカットモデル。1段目の途中あたりに、茶色っぽく見えているのが個体燃料(画像提供:JAXA)
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 自動車は、燃料のガソリンや軽油を燃やして動力を得ている。燃焼には空気中の酸素が必要だ。だから正確には、自動車は燃料と空気中の酸素で動いている。

 ロケットは真空の宇宙空間を飛ぶので空気中の酸素を使うことはできない。そこで酸素に相当する酸化剤という物質も持っていくことになる。燃料と酸化剤を混ぜて燃焼させ、発生したガスを噴射することでロケットは推力を発生させて飛ぶわけだ。

 液体ロケットは液体の燃料と酸化剤を使用するロケットだ。別々のタンクに燃料と酸化剤を入れておいて、パイプで引き出し、燃焼室というところで混ぜて燃焼させる。燃料と酸化剤にはさまざまな組み合わせが使われている。一番高性能になるのは液体水素と液体酸素という組み合わせだが、液体水素はマイナス250℃以下と極低温で取り扱いが非常に難しいという問題点がある。さらに液体水素は非常に密度が低いので、燃料タンクが大きく重くなるという欠点もある。種子島から打ち上げている日本のH-IIA/H-IIBロケットは、この組み合わせを使っている。

H-IIAロケット試験機1号機用のLE-7Aエンジン。液体水素と液体酸素の配管など複雑な様子が分かる液体燃料エンジンだ(画像提供:JAXA)
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 この他、ケロシン(灯油)と液体酸素という組み合わせもよく使われる。灯油は常温で液体である上に密度が高いので、液体水素よりもずっと扱いやすい。

 基礎設計が古いロシアの「プロトン」ロケットや中国の「長征」ロケットでは、窒素と水素の化合物であるヒドラジンと、窒素と酸素の化合物である四酸化二窒素という組み合わせも使われている。両方とも常温では液体で、混合すると着火装置なしに自然発火するという利点がある。そのいっぽうで、ヒドラジン、四酸化二窒素、噴射ガスの窒素酸化物のすべてが毒性を持つという問題点もある。2013年7月に、ロシアの「プロトン」ロケットが打ち上げ直後に姿勢を崩して落下、爆発する事故があったが、落下地点の除染に2カ月もかかってしまった。