今回のテーマ:ボーカロイド。「初音ミク」のことと思っている人がいるかもしれないが、ボーカロイドとはサンプリングした人間の音声を利用して、コンピューター歌声を合成するソフトウエアのこと。ヤマハが商標を保有している。

 最近はネットだけではなく、テレビ・ラジオなどでもボーカロイドの澄んだ、しかしどこか人間離れした歌声も一般的となった。“歌うロボットのようなものがいる”と何となく思っている人もいるだろうが、実はこのボーカロイド、パソコンで音楽を作るDTM(
Desk Top Music)で使うソフトウエアの一種類、歌声を作るソフトの名前なのだ。

 「ボーカロイド(VOCALOID)」は、コンピューターで歌声を合成するソフトウエアだ。技術開発を行ったヤマハの商標である。サンプリングした人間の音声をデータベース化しておいて、それを組み合わせて歌声を合成する機能を持つ。基となる声を提供した声優別に様々なソフトウエア・パッケージが販売されており、一般にパッケージ毎に固有のキャラクター名が付いている。

「初音ミク」の製品パッケージ

 ヤマハだけではなく、ヤマハから音声生成技術のライセンスを受けたソフトハウス各社からも発売されており、2007年にクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が発売した「初音ミク」(音声データを提供したのは声優の藤田咲)が爆発的なヒットとなって一般に普及、広く知られるようになった。

 初音ミクのパッケージの表には、青緑色の長い髪をツインテールにまとめた少女のキャラクターの絵が印刷してある。中に入っているのは藤田氏の声に基づく歌声合成ソフトウエアだが「ソフトが作り出す歌声はこの少女の声である」という趣向だ。初音ミクの他に、同じクリプトンからは「鏡音リン/レン」「巡音ルカ」「MEIKO」「KAITO」と、異なる人が音声データを提供したパッケージが、それぞれにキャラクターを与えられて発売中。他にも「がくっぽいど」(発売はDTMソフトメーカーのインターネット[大阪市]、音声データ提供はシンガーソングライターののGACKT)、「Mew」「兎眠りおん」(ヤマハ)など多数のパッケージが発売されている。

 ボーカロイドがここまで一般化するに到るには、1)DTM、2)クリプトンが「初音ミク」ヒット時に見せたオープンで柔軟な姿勢、3)ドワンゴの子会社ニワンゴが運営する動画サイト「ニコニコ動画」――という3つの要素が関係してくる。

 DTMというのはパソコンを使って、自分なりの音楽を作成し、鳴らすことだ。楽曲をパソコンのキーボードを使ってプログラムするので「打ち込み系」と呼ばれることもある。1980年代からシンセサイザーをパソコンで制御して音楽を演奏するという形で発展してきた。最近ではパソコンに取り込んださまざまな楽器や効果音などのサンプリング音源をプログラムによって鳴らすという形で、パソコン1台だけで多数の楽器が登場するかのような音楽を演奏することができる。

 ところが長年DTMでは歌声を作ることができなかった。どうしても歌声を入れたいDTMユーザーは自分で歌ったり、歌が得意な知人友人に歌ってもらったりしていたのだ。