今回のテーマ:PM2.5。大気中に浮遊している、直径が2.5μm(1μmは、1mmの1/1000)以下の微粒子のこと。Particulate Matter 2.5(粒子状物質2.5)の略。

 大気中には実に様々な微粒子が浮遊している。小さいので、風や大気の循環でなかなか落ちてこない。

 ではその正体はいったい何なのかというと、これが実に様々。おなじみの花粉、土ぼこりや火山灰、カビの胞子のように天然由来の微粒子もある。一方で、石炭を燃やす時に発生する煤煙(スス)や、車が走ると舞い上がるタイヤやアスファルトの粉塵、さらには燃焼などで排出された有機汚染物質が大気中で化学反応して粒子になったものなど、人の営みの結果、できてしまう微粒子もある。

 比較的大きな粒子は、呼吸で肺に入っても排出される。しかし、粒子の直径がすごく小さいと肺に付着したままになる割合が高くなり、呼吸器疾患、肺機能低下、さらには肺気腫やアレルギーなどの健康被害を発生させる可能性がある。これが主に問題視されている「PM2.5」だ。

ホームズが活躍した霧のロンドン、実はPM2.5?

 健康被害を発生させる浮遊微粒子は、粒子の直径で区分される。直径10μm以下はPM10と呼ばれる。PM10に対しては環境問題が深刻化した1950年代以降危険性が指摘され、世界的に1970年代に環境基準が作られた。日本は粒子直径6.5~7μm以下の粒子をSPM(suspended particulate matter)と呼び、1972年に最初の環境基準を制定した。

 それに対して1990年代後半から米国では、より粒子直径が小さく、ディーゼル車などの排気ガスに含まれているPM2.5の危険性がクローズアップされて環境基準作りが進んだ。一方、日本のPM2.5対策はかなり遅れ、2009年にやっと「1年平均値が15μg/m3以下、かつ1日平均値が35μg/m3以下であること」という環境基準が制定されている。日本国内の浮遊微粒子濃度は、主な排出源である自動車の増加に伴い悪化してきたが、2003年以降、排出基準を設けてディーゼル車の走行規制を始めてからは、徐々に改善している。現在は日本全国500カ所以上に測定装置が設置されており、大気中の微粒子濃度を常時計測している。

 にもかかわらず最近、急にPM2.5が注目されてきた理由は、経済成長が著しい中国で急増した自動車の排気ガス、暖房に使われる石炭などから排出されたPM2.5が、風に乗って日本に到達するようになってきたからだ。中国の各都市のPM2.5汚染はかなり深刻で、北京では2012年冬に1時間平均で最高600μg/m3超を記録している。

 今年もハルピンで暖房を一斉に開始した10月20日に1時間平均で500μg/m3を超えた。北京や上海でも、連日1時間平均で300μg/m3を記録している。こうなると大気は霞がかかったようになり視界も利かなくなる。

 ちなみに、19世紀のロンドンも同様の深刻な大気汚染に悩まされていた。シャーロック・ホームズが活躍した“霧のロンドン”の霧とは、主に石炭暖房から発生する大気汚染。まず間違いなく、大量のPM2.5を含んでいただろう。