今年、30周年を迎える吉田カバンの「タンカー」シリーズ。その間、基本的なデザインや特徴を大きく変えることなく、人気を維持している。

 タンカーはなぜ30年も売れ続けるのか? その理由を企画本部長の長谷川進氏と30周年記念モデルを担当した企画部の細谷和人氏に聞いた。

もともとは「ミリタリーを日常で」

 「タンカーのディテールはミリタリー(軍用)のヘルメットバッグに由来している」と長谷川氏。それを日常生活の中に入れるためにさまざまにアレンジしてきたのが、タンカーの歩みだという。

 「例えば、ヘルメットバッグは空軍パイロットが使う丸いヘルメットを入れるためのバッグなので、マチがない構造だが膨らむように作られている。しかもその状態でもフロントポケットが使えるなど、ミリタリーのモノは構造に意味がある。非常にシンプルだが、機能がしっかりしている」と、タンカー初期の大型バッグを手に長谷川氏は語る。

 さらにフライトジャケットの「MA‐1」をモチーフに裏地をオレンジにしたり、ミリタリーの世界にはなかった黒を採用したりなど、ミリタリーテイストをベースに普段使いのカバンとして完成させていったのがタンカーというわけだ。当時、黒いカバンで内装がオレンジというのは考えられなかったし、ミリタリーテイストで黒のカバンというのも斬新だった。ちょうど、ファッション的にも黒が流行り始めたころだったことも影響しているのだろう。

 一方、「1983年の発表時から基本的なデザインは変わっていないし、できるだけ変えないようにずっとやっているが、細かいところは進化している」と長谷川氏。例えば、古いモデルと比べてみるとパイピングの素材を変えて割れにくくしたりなど、機能や耐久性に関わる細部はバージョンアップさせていることが分かる。

売り場スペースが限られ、小型のラインアップが充実!?

 発売当初からショルダーバッグなどの小型のラインアップがそろっていたのも珍しかった。「セレクトショップは棚のスペースが限られているので、大きなカバンは置いてもらいにくかった。ちょうどそのころ、たすき掛けでショルダーバッグを持つのが男性の間で流行したことも、小型のラインアップを構成に入れたきっかけだった」(長谷川氏)という。

 その後、セレクトショップでは人気でもマス市場で受け入れられないまま、80年代後半には生産量が減少。ところが90年代中ごろに若いころタンカーのファンだった世代が裏原宿などのファッション業界で活躍し始め、彼らとのコラボレーション商品を発表。さらに定番品の追加型としてウエストポーチや3ウェイバッグなどを展開したことが起爆剤になり、かつてない人気となった。

 「それまでは“知るひとぞ知る”というカバンだったが、90年代には人気テレビドラマで使われたりしたこともあり、ファッションアイテムとして認知度が上がった。気がつくと、ウチのラインアップのなかでも非常に重要な、幹のような存在になっていた。今、海外のデザイナーの方とお話しすると、“吉田カバン=タンカー”と思われている方が多い」(同)。

発売当初の展示会の様子。MA-1と一緒に並べられている
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