旅客機の客室乗務員(キャビンアテンダント、CA)の仕事と聞くと、機内で飲み物や食事を提供したり機内販売を行ったりするイメージが強いかもしれない。しかし、こうしたサービス要員としての仕事だけでなく、緊急時に乗客の安全を守る航空保安要員としての仕事もあり、むしろ後者のほうが重要なのだ。今回はその訓練を取材・体験した。

今回訪れたのはJALの「非常救難訓練センター」
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訓練は「英語のラジオ体操」から

 CAの資格を維持するには年に一度筆記試験を受け、それに合格したうえで「定期救難訓練」を受ける必要がある。日本航空には日本人約5000人、海外の7基地にも約1000人、合計約6000人ものCAがおり、その全員が年に1度はこの施設でこの訓練を受ける。取材したときには、ちょうどタイのバンコクで採用されたCAの訓練を行っていた。クルマの運転免許のように、誕生月に受けることになっているそうだ。

 訓練はまずラジオ体操から。これが日本語ではなく、英語のラジオ体操というなかなか珍しいものだ。続いて「滑走姿勢」を教わる。地上で緊急時に飛行機から脱出するとき、「スライドラフト」と呼ばれる空気で膨らませた滑り台のような装置で滑り降りる。その滑るときに取る姿勢だ。これが非常に重要であることを、あとで思い知らされることになった。

これが「滑走姿勢」。足は肩幅に広げてまっすぐ伸ばし、上体を起こしてやや前傾姿勢になり、両手は前方に伸ばす。滑走時に危険なので荷物は持たない
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 ドアトレーナーを見学したあと、訓練用の実寸大モックアップに乗り込んでの訓練だ。モックアップは現在は使用していない747型機がモデルになっていて、JALのマークも以前のままだが、ドアなど訓練で重要な部分は現在使用中の機材と同じものになっている。さまざま状況の訓練ができるように高さが変えられ、この日は中程度の高さということで約4.4mに設定されていた。

 モックアップのドアから伸びているのが、緊急脱出時に滑り降りるスライドラフト。高圧ガスであっという間に膨らむ。地上では滑り降りて脱出するのに使い、着水した場合はこれが救命ボートになる。モックアップの反対側はプールになっており、海上などに着水した場合の訓練もできる。

これはドアの開閉を訓練するドアトレーナー。機種ごとにドアは異なるので、手順を間違えないように訓練する
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こちらは、最新の787型機のドアトレーナー
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訓練用の実寸大モックアップ。こちら側は地上で緊急脱出する場合を想定したもの。ドアから伸びているのがスライドラフド
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反対側はプールになっていて、海上などに着水した場合の訓練ができる。水深は1.1mと1.6m。スライドラフトは水上では救命ボートになる
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内部は実機同様の座席と訓練用の機材が配置されている
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反対側にあったモックアップは高さ約4.9mに設定されていた。下から見上げるとかなり高く、怖い
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