アベノミクスをサキヨミする1つの指標とは

 このコラムではヒットのメカニズムを分析している。さて、今この瞬間、世の中の人々が最も関心があるのは、アベノミクスがちゃんとヒットないしは流行を続けてくれるのか、それともここで勢いを失ってしまうのかという問題ではないだろうか。

 2013年5月の株式市場は、中盤までは日経平均が順調に上がり、5月23日には1万5942円60銭と、いよいよ1万6000円台に突入するかと思われた。しかし、その瞬間に大暴落が始まった。そしてこの日は一気に1143円安と、日経平均はリーマンショック以来の下げ幅を記録した。その後も株価は下落を続け、この原稿を書いている6月3日時点で日経平均は1万3500円前後と、ゴールデンウィーク前の水準にまで落ち込んでいる。このまま株価バブルははじけて終わるのか。それともこの株安は一時的な調整になるのか。

 アベノミクスによる好景気は円安から始まり、それにつれて株価が上がったことで、世の中の雰囲気が上がってきたというものだ。本当の好景気になるかどうかは、それに続いて実体経済が回復していくかどうかにかかっている。

 さて、8月12日に4~6月期のGDP速報が発表されるが、それはまだまだ先のスケジュールの話だ。それよりも前に、実体経済の景気をサキヨミする方法はないのだろうか。

 我々経営のプロはそれぞれ独自に、景気をサキヨミするための指標を持っているものだ。その中から、今回のアベノミクスをサキヨミする1つの指標を紹介しよう。

 それは、全国段ボール工業組合が発表する段ボールの生産高である。

 なぜ段ボールの生産高が景気のサキヨミに使えるのか。それは日本の景気をけん引するのが製造業、つまりメーカーだからだ。本当に景気が良くなってくると、メーカーからたくさんの製品が世の中に出回るようになってくる。そして、そういった製品を運ぶのに段ボールが必要になるというわけだ。

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 メーカーが商品を出荷するのも、スーパーの物流倉庫から各店に商品を運ぶのも、細かな商品を事務所間でやりとりするのも、すべては段ボールが移動する形で行われるものだ。景気が良くなってくると段ボールが必要になる。だから、段ボールの生産量は景気のサキヨミ指標になるというのだ。

 ちなみに、この話は残念ながら私が発見したのではない。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授が著書の中で紹介している話である。

 実際にどうなのかを確認するため、2006年から2012年末までの日本の四半期ごとの経済成長率と、段ボールの生産量の変化(過去3カ月の前年同期比の移動平均)をグラフにしてみた。

 図のグラフを見ると、両者は完全に連動しているわけではないが、景気の変化と段ボールの生産量にはそれなりの関係があることがわかる。また、よく見ると、景気があまり変化しない時期には、段ボールの生産量と経済成長率はうまく連動しないのだが、景気が急激に変化する前後では、段ボールの生産量と経済成長率はかなりきれいに連動するように見える。

 ところで、「グラフがまったく同じように連動するなら、サキヨミ指標じゃないんじゃないか?」という反論があるかもしれない。それはそうかもしれないが、2013年4月の段ボールの生産量はすでに5月末に公表されている。4~6月の合計も7月末には判明する。

 だから、段ボールの統計を見ていれば、2013年8月に公表される4~6月の経済成長率よりも早く、実体経済が上がり調子なのかどうかをサキヨミできるのだ。