必ずそろえるべきマストアイテムは?

 装備はまずどのようなものをそろえれば安全なのか。重要なものから挙げてもらった。

●トレッキングシューズ

●防寒着
 特に7月の山開き直後はまだ寒いことが多いので、セーター、フリースジャケットなどを用意する。最低でも長袖シャツ・長いパンツを着ること

●レインスーツ
 登山初心者が一番注意すべき点は、雨と風。なかでも雨に濡れることは命を落とす危険に直結するという。特に8合目より上は植物がないため、風が吹くと隠れる場所がない。「雨に濡れて風に吹かれるとみるみる体温が下がり、低体温症になる。岩などの滑落による事故以外の要因で最も多いのは、このケースです」(大蔵氏)。

 低体温症になると脳の働きが低下し、思考能力が低下する。ザックの中に防寒具があるのにそれを取り出せず、そのまま遭難してしまう。低体温症で遭難した人のザックには、助かるための装備一式が入っていた、ということが珍しくないという。

 初心者は出発地点が暖かいと油断し、軽装で登ることが多い。しかし標高が100メートル上がるごとに気温は0.6度下がる。出発地点の河口湖付近が20度なら、山頂付近は2度程度しかないということになる。レインウエアは保温性が高いので、雨が降らない場合も防寒対策に役立つ。出発地点が真夏の暑さだったとしても、必ず用意するべき。

●ザック
 容量が20リットル程度のものが適している。富士山登山が可能な装備品は衣類を含め、5キロ程度。手で持つと重く感じるが、背負って3カ所でしっかり固定すると重さを感じにくい。

●サバイバルレスキューシート
 防災セットでもよく見かけるアルミ製シートだが、この1枚が生死を分ける最重要グッズのひとつ。保温性が高いため、これにくるまっていれば低体温症を防げる。また雨や風をシャットアウトできるので、簡易テント代わりにもなる。「ニュースになった万里の長城の日本人遭難事故でも、このシートを持っていれば助かったはず。専門店で売っている破れにくい丈夫なものが理想だが、100円ショップで売っている薄いものでもないよりはマシ。100円で命が助かることもあるのだから、絶対に入れておいてほしい」(大蔵氏)。

●地図
 現在地の標高や目的地までの標高差、傾斜度、距離などを読み取るための必需品。国土地理院の2万5000分の1の地図の場合、地図上の4cmが1kmで、等高線が50メートルごとに太線になっている。平地で1キロ歩くのにかかる時間は普通約15分だが、登山道の場合、100メートルの高度差につき約20分をプラスする必要がある。例えば地図上の距離が8cm(2km)で、登り口と目的地の高度差が600メートルの場合、単純計算ならだいたい2時間半程度で目的地まで到達できることが、地図で読みとれる。

●ヘッドランプ
 何かアクシデントが起こり、下山できないまま夜になった場合に絶対必要。どんなときでも必ず持っていくべき。

●帽子、手袋
 夏の登山では日焼けや熱中症にも注意が必要。防寒のためにも、首筋の後ろや耳をカバーできる帽子が必須。

●大きめの水筒
 ザックから水筒やペットボトルを出さずに水分補給ができるように、ウオーターパックに吸い口が付いたチューブを装着しているハイドレーションシステムのものが便利。

●救急キット
 持病の薬や傷薬、消毒薬など。また登山道には水がないため、怪我をしたときに傷口を洗うための水を飲料用とは別に必ず用意しておくこと。健康保険証のコピーも入れておくとよい。

ザックは首の後ろとの間に三角形のすき間ができるのが正しい位置
[画像のクリックで拡大表示]
ハイドレーションシステムは飲みたいときにチューブをホルダーから外し、歩きながら飲めるので便利
[画像のクリックで拡大表示]
大蔵氏の救急キット。消毒薬、下痢止め薬、テーピング、抗生物質の軟膏、虫刺され用薬など
[画像のクリックで拡大表示]