雑誌『日経エンタテインメント!』のコラムと連動するこのコーナー。毎月、1つのお題に沿って、これから大ブレイクしそうなニューフェースをピックップし、マーティが集中的に聴き込みます。『日経エンタテインメント!』では、そのなかでも特にユニークだという「イチ推し」を中心に紹介。そして、こちらの「日経TRENDY Net」では、雑誌で紹介し切れなかった「さらにオススメ!」のアーティストについて、その魅力を語ります。

 最近は、AKB48からソロデビューするメンバーが増えてきたよね。AKB48のヒット曲では個人の声をほとんど判別することができないけど、ソロの曲では、自分の“推しメン”のボーカルだけをじっくり聴くことができます。デビュー当時からずっと応援してきたファンにとっては、それって最高にうれしいプレゼントじゃん。

 そこで今月は、これまでにAKB48からソロデビューしている5人のシングル曲を聴き比べてみました。一番驚いたのは、僕が事前に想像していた以上に、音楽性の振れ幅が広かったこと。演歌から電子ポップまで、いろんなジャンルの音楽に挑戦していて、改めてAKB48の“奥の深さ”を思い知らされたよ。

 そんな中から、僕が「今月のイチ推し」に選んだのは、高橋みなみさんのデビューシングル『Jane Doe』です。大人っぽいボーカルとドラマティックな構成が聴きどころで、ハイテンションなノリが本当にかっこいい曲なんだよ。詳しくは、雑誌『日経エンタテインメント!』5月号の中で紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

 ここではさらに、4人のメンバー(柏木由紀、岩佐美咲、河西智美、渡辺麻友)のシングル曲をチェック。AKB48 のヒット曲では分からなかったボーカルの個性や、それぞれが目指している音楽の方向性を比べてみようと思います。

柏木由紀
『ショートケーキ』
06年12月、AKB48の第3期オーディションに合格。愛称は「ゆきりん」。高城亜樹、倉持明日香と共に、3人組の派生ユニット「フレンチ・キス」の一員としても活動中。昨年6月に実施された「AKB48 27thシングル選抜総選挙」では、前年に続いて、第3位に選ばれた。
『ショートケーキ』は、今年2月6日にリリースされたソロデビューシングル。自身が主演したドラマ『ミエリーノ柏木』(テレビ東京系)の主題歌にも起用された。
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 この曲は、今回聴いた5曲の中でいちばん“AKB48っぽい”曲だね。構成的には、クラシック音楽の『カノン』のコード進行をうまく使っています。この曲に限らず、J-POPには、昔から『カノン』のコード進行を使った曲がよく登場するよね。僕の予想だと、洋楽やK-POPと違って、J-POPはAメロからサビまでの“旅”が長いから、このコード進行との相性が特にいいんじゃないかな。

 音楽的な仕掛けで面白かったのは、2回目のAメロ。ここは1回目のAメロとは少し違うアレンジになってて、ゆきりんのかわいいハモリが聴けるパートです。しかも、J-POPのハモリは、普通だと「1音半」の音程差でハモるのが定番なんだけど、ここのハモりはもっと高音でハモってて、彼女のかわいい声質がさらに強調されてるんだよ。

 バックの演奏も、ここのパートだけは静かめで、おもちゃのピアノみたいな、かわいい鍵盤楽器の音色をうまく使っています。歌詞の世界観ともぴったりハマってて、すごく効果的なアレンジになってるから、今度聴き直すときに、ぜひじっくり注目して聴いてみてほしいな。

岩佐美咲
『もしも私が空に住んでいたら』
AKB48第4回研究生(7期生)オーディションに合格し、10年7月に、正式にチームBメンバーに昇格。愛称は「わさみん」。渡辺麻友や仲川遥香らと共に、派生ユニット「渡り廊下走り隊7」の一員としても活動中。12年2月に、AKB48史上初の演歌歌手として『無人駅』でソロデビューを果たした。昨年6月に実施された「AKB48 27thシングル選抜総選挙」では、33位にランクイン。
『もしも私が空に住んでいたら』は、今年1月9日にリリースされた2ndソロシングル。
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 今回聴いた中で、個人的に一番びっくりしたのは、この岩佐美咲さんのシングルです。彼女は、これまでにソロデビューしたAKB48のメンバーの中で、文句なしに一番の歌唱力だね! ボーカルの表現力がすごく発展してるから、演歌以外に、あやや(松浦亜弥)や水樹奈々さんみたいな路線に挑戦しても、全然余裕でこなせると思うよ。

 演歌といっても、実際によく曲を聴いてみると、堅苦しい昔風の演歌ではなく、全体のアレンジはけっこうポップに工夫されています。でも、面白いのは、曲が終わる直前のアウトロの部分だけが“超ド演歌”風のアレンジになっていること。ここだけ完全に『演歌の花道』で、司会者さんのナレーションが聞こえてきそうじゃん(笑)。

 米国には、カントリー&ウエスタンを若い人向けにアレンジした「カントリーポップ」っていうジャンルがあるけど、この曲はその演歌バージョンみたいです。ふだんは演歌を聴かないAKB48ファンも、これなら違和感なく楽しめそうだね。