愛煙家にとって不都合な真実とは

 人は2種類に分けられる。タバコを買う人と買わない人だ。私は残念ながらタバコを買う人の側に属する。

 とはいえ、私は喫煙者ではない。80歳になる父がいて、タバコを買って行くと喜ぶのだ。ちょっとした気遣いのつもりで始めた習慣だったが、2010年のたばこ税の増税で、それまでひと箱300円だったタバコの価格が一気に410円に値上がりした。

 愛煙家の方には釈迦に説法かもしれないが、2000年代に入ってからたばこ税は3度増税された。2000年当初250円だったマイルドセブン1箱の価格は2003年には270円へ、2006年には300円へ、さらに2010年には410円へと3~4年毎に値上がりしていった。

 その後、2011年に今世紀4度目の増税の機運が高まったが、そのタイミングでの増税は一旦見送りになった。しかし昨年夏、ふたたび厚生労働省が2013年度の税制改革要望としてたばこ税の増税の要望案を示したことで、「来年度、ふたたび増税になるのでは」と、タバコを買う側の人間は皆、戦々恐々としているのである。

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 普通の増税の場合は、国民としては反対しやすい。しかし、たばこ税の増税については、主にタバコを買わない側の人間からの賛同が得られやすいという、少々嫌らしい性格をもった政治問題になる。

 2010年の日本の喫煙率は19.5%、つまり国民の8割は吸わない側の立場なので、愛煙家はかなり肩身が狭い。そして増税に大義名分があるため、民意はたばこ増税に寛容で、そのため「最も上げてほしい税金の1位はたばこ税」などという新聞記事が掲載されることになる。

 実際に厚生労働省がたばこ増税を推奨する目的も、

 「国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、たばこ税及び地方たばこ税の税率を引き上げる」(平成23年度厚生労働省税制改正要望より)

 と言う具合で、増税論議はあくまで税収増ではなく国民の健康の向上が起点となっている。

 過去のたばこ税増税議論では、タバコ1箱を1000円にしてはどうかという議論が活発になされた。研究者により、タバコ1箱が1000円になれば97%の喫煙者が真剣に禁煙を考えるというデータが提示され、健康のためにはその方がいいのではないかという、一見まっとうなご意見も展開された。

 たばこ税増税に反対する愛煙家の立場に立てば、「急激な増税は極端な禁煙需要をもたらすので、結果的には税収が減るのだ」と、財務省をなんとか味方につけられないかと画策したいところだ。

 では実際には税収はどうなっているのだろうか。実は2010年度のタバコ価格の大幅値上げは、それまでの2003年や2006年のちまちました値上げとは違って、愛煙家にとって、実に不都合な真実をあぶりだす結果となっているのだ。