こんにちは。博報堂若者生活研究室の原田曜平です。これまで様々な有識者の方々と、「若者」というテーマで対談させていただいてきました。今回はファッションの研究をされている共立女子短期大学の渡辺明日香先生と、近頃の若者のファッションについて対談させていただきました。

渡辺 明日香
わたなべ・あすか。1972年栃木県生まれ。共立女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程修了(社会学博士)。共立女子短期大学助手を経て、現在、共立女子短期大学生活科学科准教授。ストリートファッションの定点観測に基づく若者文化、および色彩、生活デザインの研究を行っている。著書に「ストリートファッションの時代」(明現社)、「徹底図解 色のしくみ」(新星出版社)、「ストリートファッション論」(産業能率大学出版部)などがある

ファッションでも空気を読む

原田曜平(以下、原田):若者論ではファッションは一大テーマです。最近、若者のファッションに新しい変化はありますか?

渡辺明日香(以下、渡辺):街の若い人を見ても、勤務先の女子大の学生を見ても、皆おしゃれはしているけれど、飛び抜けて周りと違う格好をしている人が少なくて、とてもフラットな感じです。ちゃんと流行のアイテムを着ているし、洗練されているけれど、それがあまりに同質化していて「もうちょっと違うの無いの?」と思う状況が、ここ4、5年ほど続いています。従来ファッションは、自己表現の手段だったはずですが、最近はダサすぎてももちろんダメですが、おしゃれ過ぎてもダメということにとても気を配っていて、程良い感じがいいという意識を皆が持っているようです。5、6年前は、「その格好で授業受けるの?」とか「胸見えちゃっているじゃない」とか「真っ黒すぎて誰だか分からないよ」といわれるすごいギャルがちゃんといました。髪の毛が金髪で、ヘッドドレスを被ってフリフリの格好で授業を受けるロリータファッションの子もいました。しかし今は、少なくとも学校にそういう格好をしてくる子はいません。

原田:私が再三述べている、若者の空気を読むという特徴かもしれませんね。目立ち過ぎると「イタイやつ」と周りに思われてしまう。これがファッションの領域でも表出してきているのでしょう。渡辺さんは大学だけでなく、ストリートで若者のファッションを撮り続けていますが、ストリートでも変化は起こっていますか?

渡辺:もちろん、渋谷109の前に行けばギャルの子、原宿にはロリータの子が、今でもいますが、過去に比べるとおとなしい格好になっています。私が観測をスタートしたのは94年で、当時はもっと面白い格好の若者がいました。その時代を知っている人間からすると、皆が「この辺でいいかな」と妥協しているようで、物足りなさを感じます。

原田:ずっとストリートファッションを分析してきた渡辺さんにとって、いつの時代のどんな格好が一番面白かったですか?

渡辺:90年代の半ば過ぎが一番面白かったですね。裏原宿が注目され始めた頃で、ズボンをずるっと下げている男の子がいたし、渋谷109のエゴイストなどが話題となり、カリスマ販売員が注目され、体型もスマートで頭にエクステを付けてネイルもして、ファッションにコストをかけている人が、たくさんいました。

原田:最近の若者論は、常に若年層の雇用の不安定さや収入の低さと結びつけて語られています。収入が低いから消費をしなくなっている、以上、のように。もちろん、経済的要因は、大事なファクターではあると思いますが、本当にそれだけで十分な分析と言えるかどうか私は疑問を持っています。やはり、今の若者は洋服代をかけなくなっているのでしょうか。

渡辺:あると思います。実際にお金がないことも原因の1つでしょうが、ファストファッションが出てきたので、お金をかけなくても済むようになったこともあると思います。でも、減っているのは洋服にかけるお金だけではなく、時間とか、気持ちとか、ファッションにかけるエネルギーが総じて低くなっている気がします。