麻倉怜士(あさくら・れいじ) デジタルメディア評論家、日本画質学会副会長、津田塾大学講師(音楽)

 今回は、オーディオ・ビジュアルの世界において日本ビクター(現・JVCケンウッド)が残してきた足跡を考えてみましょう。同社は2007年8月までパナソニックの連結子会社でしたが、外資系ファンドとケンウッドの株主争いの中で最終的にケンウッドが勝ち、経営統合した結果、JVCケンウッドとなりました。

 その有為転変で象徴的なのが横浜・新子安地区です。ここには伝統の本社があり、その地にあったビデオ事業部から「VHS」が誕生した話は、NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』でも紹介され有名になりましたが、現在は完全に撤去され佐川急便の配送センターになっています。

 VHSデッキで世界を制覇し、オーディオでも高い評価を得ていたビクターですが、リストラの連続で、資産を 切り売りし人員を減らし、優秀な開発者が多数、流出していきました。しかし、それでも今はハイエンドプロジェクターの世界ではソニーと並んで「4k2k」を普及すべく、世界で頑張っているのは特筆されます。ビクターはDVDレコーダーやビデオカメラも非常に良いものを作っていました。ビデオカメラは現在も残っていますが、価格競争にさらされていて難しい状況にあります。

 ビクターがケンウッドと一緒になって何を得たのか。カーオーディオの部隊を統合して世界展開という流れはありますが、それ以外に大きな変化は今のところありません。新規事業だった「RYOMA(リョーマ)」もどこかへ行ってしまいました。

JVCケンウッドが2009年に発表した「RYOMA(リョーマ)」ブランドの製品第一弾として2011年2月に発売した「RyomaX RY-MA1」。FM/AMラジオチューナーを内蔵するBDレコーダーで、「オールインワン AVシステム」というコンセプトを打ち出していた
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 しかし実は、ビクターの会社としてのやり方、オーディオ・ビジュアルの文化や技術が、いま、各地で大きく花開いているのです。