前回はソニーのオーディオ・ビジュアル製品のキーパーソンである、音作りの“マエストロ”として知られる金井隆氏にデジタルオーディオをより良い音で聴くための方法を伺った。

 今回もよりディープに、デジタルオーディオやネットワークオーディオの話を伺っていきたい。

ソニー コンスーマープロダクツ&サービスグループ ホームエンタテインメント事業本部 HAV事業部 音響設計部 主幹技師の金井隆氏
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LSIやICなどの部品を取り付ける「ハンダ」を自ら製作

 金井氏の“音へのこだわり”っぷりは生半可ではない。何しろ、「TA-DA5800ES」をはじめとするソニーのAVアンプに用いられている「ハンダ」すら自ら組成を決めているというほどだ。

 「ハンダに鉛が使えなくなって、一般的に言ってオーディオ機器の音が悪くなってしまいました。ハンダがスズに銀・銅・銀・ビスマスを含む組成が融点が低くて主流になりましたが、結晶構造があまりよくなくて音が悪かったのです。なのでソニーはその組成を使いませんでした」(金井氏)

「中央の黄色いのは以前に私が使っていたものです。これがスズの鉱山がなくなって使えなくなったため、新たに緑の「M700ES」というES型番のハンダを作りました」(金井氏)
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 ベースとなるスズは通常の量産機器では純度3N(99.9%以上)のものを使っているというが、新モデルでは純度4N(99.99以上)のものを使っているという。

 「さらに音質的に好ましくない微量元素、入れた方がいい微量元素は何かを調べました錫を分析すると例えば鉄やビスマス、アンチモンなどの金属が出てきます。これを音質がよくなる元素、悪くなる元素を耳で聞き分けました。ハンダとしては純度の高いスズにまず銅を0.7%ぐらい入れます。これは融点を下げるためです。その上で音質を向上させる不純物を適度な濃度で入れて音質を上げています」(金井氏)

 元々はある鉱山で採れたスズに銅を入れただけのハンダを使っていたという。

 「世界中の20カ所くらいの鉱山のスズの音を聴いた中で最もいい音のものを使っていたのですが、その鉱山が廃鉱になってしまったため、使えなくなってしまいました。

 そうなると困るため、微量元素を測定することで、なぜ音がいいのかを解析したのです。こんな元素がどのくらいの割合で入っている、ではこれを入れたらどういう音になるのか、入れて音を聴くといったことをずっとやってきました。オーディオエンジニアってそういう馬鹿なことをやるんですよ(笑)」(金井氏)