人間誰しも美しく生活したいと思っている。それは見た目だけじゃない。中身から美しくということだ。
 それはクルマも同じである。今どきクルマを実用性だけで買う人はいない。だったらトラックやバンでいい。そうではなく、乗る人の身体はもちろん、時には頭や心まで気持ち良くしてくれるから買うのである。それはスタイリングであり、走りであり、質感であり、ブランド性であり、知的興奮を誘うエピソードである。クルマはある意味、五感で味わうプロダクトだ。だから楽しくも難しいのである。
 というわけでこの“ビューティフルカー”では私、小沢が美しさや知的エピソードを中心にクルマを語っていこうと思う。

【コンセプト】円高がもたらす生活のチープ化

“グローバルコンパクトカー”とうたわれた6代目三菱「ミラージュ」
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 正直、ちょいとネガティブ指向がある不肖小沢。日本経済の将来に関しても、時折不安に思うときがある。それは、もしや日本はこのままアジア化していくのでは? ということだ。それも賃金や物価レベルで。

 いまでこそ新興国との差はかなりあるが、日本の経済は実質ゼロ成長。それも「失われた20年」とも言われる、終わり知らずのゼロ成長だ。

 いっぽう隣の大国、中国にしろ、スピードは落ちつつあるとは言え、労働者賃金はウナギ上りで、政府主導で毎年約1.7倍になっている(※)。先日行った上海でも、物価は日本の半分どころか部分的には4分の3ぐらいになっていた。

 つまり、日本がデフレキープで、新興アジアが上がり続け……となったら日本の賃金はアジア平均に並んじゃうかもしれないのだ。ならないと思いたいが。

 それはそれで労働現場は日本に戻るかもしれないが、その頃には職人技術などとっくになくなってるだろうし、しかもこの国の政治家は、そうなってもいいと思っているフシすらある。なにしろ自分たちの縄張り争いには熱心だが、領土問題は腰が引けてるわ、円高も放置だわ(当人はそうでないつもりだろうけど)、ズルズルと国益を海外流出させているのだから。

 結果、我々の生活がどうなったかといえば、特に食べ物に顕著だが、とにかく安く質素になった。バブル期は1000円はかかっていた昼飯が今や800円、500円もザラでそれ以下の人もいる。しかも食べているのはファストフードやコンビニ食。一概にマズイとは言わないが、昔のバブル的な贅沢さはほぼない。まさに生活レベルをアジアに合わせているかのようだ。

 そしてとうとう今回その波が、本格的にクルマ界にも襲ってきた気がしたのだ。そう、三菱「ミラージュ」とともに。

※内閣府発表によれば、中国の中央政府は、第12次5カ年計画(2011年~2015年)で、「可処分所得年平均成長目標は7%以上、最低賃金の伸び率は年平均13%以上とする」と明記されている。また全体の8割弱を占める全国24の省・直轄市・自治区が2011年中に最低賃金を引き上げており、平均上昇率は22%と高くなっている。