人間誰しも美しく生活したいと思っている。それは見た目だけじゃない。中身から美しくということだ。
 それはクルマも同じである。今どきクルマを実用性だけで買う人はいない。だったらトラックやバンでいい。そうではなく、乗る人の身体はもちろん、時には頭や心まで気持ち良くしてくれるから買うのである。それはスタイリングであり、走りであり、質感であり、ブランド性であり、知的興奮を誘うエピソードである。クルマはある意味、五感で味わうプロダクトだ。だから楽しくも難しいのである。
 というわけでこの“ビューティフルカー”では私、小沢が美しさや知的エピソードを中心にクルマを語っていこうと思う。

【コンセプト】EVの根本的欠点を解消?

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 漠然とカルロス・ゴーン肝入りの日産「リーフ」も出たし、EV(電気自動車)の進化もひと段落……と思っている人もいるだろう。だが、チッチッチッチ……違うんですなぁ。

 「今までのEVが弁当箱サイズの昔のショルダーホンだとしたら、『シムウィル』は今の薄型携帯。本当の革命はここから始まるんです」

 なにやら壮大なことを言うのはシムドライブ社長の清水浩先生。EVの奇才として業界では有名な慶應義塾大学環境情報学部教授だ。知る人ぞ知る8輪EVの「カズ」や同じく時速370kmで走る「エリーカ」を開発したエンジニアであり、その後、2009年にはEVベンチャーの「シムドライブ」社を創設。

 だが、正直なところ、前述リーフや三菱「i-MiEV」など、既に大メーカーから量産EVがリリースされた今、社員数十人のベンチャーの企業がどうやって勝負するんだろうと思っていたのだが、話を聞いて合点がいった。

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 ポイントは独自のインホイールモーターにある。従来のように大きなエンジンやモーターがボディー特等席にドンとあり、ドライブシャフトやチェーンでパワー分配してタイヤを駆動するのではなく、タイヤ4輪1つ1つにそれぞれ小さなホイール内モーター=インホイールモーターを付けて走る。まさしく一頭立て馬車から4匹の犬ぞりにするような革命。

 「これで車内のスペース効率が格段に上がるのはもちろん、ダイレクトドライブだからエネルギー効率も上がる。まだ台上テストの段階ですが、シムウィルは35.1kWhの電池でJC08モードで351km走ります」と清水先生。 

 電費計算すると10km/kWhであり、かたやリーフが24kWhのリチウムイオンで200km(当初は180km)だから8.3km/kWhで、エネルギー効率はざっと1.2~1.3倍。これを大きいと見るか小さいと見るかで、逆にインホイールモーターにした分、バネ下重量はタイヤ1個につき50kg前後は重くなり、ロードホールディングや走りは悪くなるはずだが、

 「それは小沢さん、実際に乗って確認してください」とのこと。そう、なんだか知らないが、私は急遽、話題のシムウィルにテストコースでチョイ乗りすることになったのだ。

 「ジャーナリストではおそらく小沢さんが初めてですよ」とシムドライブの広報さん。短いが、ざっとインプレをご報告しよう。

シムドライブ社長の清水浩先生(左)と
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