今後も欠航しかねない「札幌・福岡発の最終便」

 周辺住民への配慮などから、成田空港の滑走路は運用時間が「午前6時から午後11時まで」と定められており、午後11時以降・午前6時より前の時間帯には離陸も着陸も一切できない。今回、ジェットスター・ジャパンの札幌発・成田行き「GK118便」が欠航したのは、就航初日ということもあってこの便より前のフライトで遅れが膨らみ、成田に23時より前に着陸できるスケジュールで札幌を離陸できる見通しが立たなくなってしまったためだ。

ジェットスター・ジャパンの札幌発の時刻表。就航初日に欠航した札幌発の最終便「GK118」は午後8時40分に札幌発、午後10時20分に成田着というスケジュール
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 既存の航空会社も当然、成田の滑走路の運用時間は強く意識しており、ほとんどの便は午後9時ごろまでに成田に到着するスケジュールを組んでいる。これならば、例え1時間半程度の遅れが出たとしても何とか23時前には滑走路に着陸できる。しかし、ジェットスターの札幌発・成田行きの最終便(GK118便)は成田に午後10時20分に到着するスケジュール。これだと、40分の遅れが出た時点でアウトとなってしまう。

 ジェットスターがこんな無理な時間に便を設定しているのには理由がある。客単価を上げにくいLCCは、飛行機の稼働率を高め、できるだけ多頻度で飛ばして多くの乗客を乗せるのが基本戦略。関空を拠点とするピーチの例を見ても、1機が1日に4地点、5地点を往復するのは珍しいことではない。必然的に早朝から深夜まで、できるだけ短い間隔で便を設定することになり、しかも1機が多くの地点を往復するため、途中で遅延が発生するとそのあとの便で雪だるま式に遅れが膨らむことになりかねない。GK118便の「午後10時20分に成田着」という、やや無理のあるダイヤ設計は、LCCにとっての基本的な経営理論から導き出されたものであり、一方でそれゆえに、今後も繰り返し欠航が発生する危険性をはらんでいる。

 ジェットスターの発表している時刻表では現状、少なくとも10月27日までは午後10時20分に成田着のGK118便が設定されており、現状ではこの便については欠航のリスクが高いと言わざるを得ない。また、7月23日からは福岡発が午後8時30分、成田着が午後10時15分という「GK128便」の運航も予定されており、この便についても同じことが言える。翌日に予定がある場合は、これらの便を避けて利用するのが無難だろう。

※(7月6日 11:00 追記)----------

 上記の件について、ジェットスター・ジャパンから詳細な説明があった。今回の欠航は、滑走路の混雑なども含め複合的な理由で遅れが拡大したことによるもの。通常は札幌便の前に1時間程度の余裕を持ったダイヤになっており、「それまでの便で多少の遅れがあっても吸収できる設計になっている」(ジェットスター・ジャパン)という。ただ、そもそも成田到着の時間が滑走路の運用時間ぎりぎりである点については、「ダイヤの再設計も含め、今後の課題として検討していく」(同社)とのことだった。

 また今回、欠航した便に搭乗予定だった利用者には、当日のホテル、及びホテルまでの往復の交通費と8000円分のジェットスターのバウチャー(クーポン券)という、手厚い内容の補償が用意されたが、これはジェットスターグループの「Disruption Policy(運航の乱れに際した対応マニュアル)」に基づいた対応だといい、特例的な措置ではないという。 今後も「同じレベルの遅延が発生した場合は同様の対応を取る」(ジェットスター・ジャパン)といい、「他社とも話し合い、将来的にはJAL便への振り替えなども検討していきたい」(同社)とのことだった。

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 日本での歴史が長く、ブランド名もそれなりに浸透しているというアドバンテージを、ジェットスターはどこまで生かせるのか。エアアジア・ジャパンが就航する8月以降、戦いはさらに厳しくなる。

ジェットスター・ジャパンの就航初日、札幌・新千歳空港にはエアアジア・ジャパンの飛行機も訓練のために飛来していた
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 なお、ジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパンに関する情報は、発売中の「日経トレンディ」9月号にも詳しく掲載している。

(文/有我武紘=日経トレンディ、写真/高山 透、山本琢磨)